圃場におけるダイズ黒根腐病発病リスクの評価およびその対策

要約

大豆の重要病害であるダイズ黒根腐病と栽培履歴、圃場環境および栽培条件の関係性を明らかにし、大豆作付予定の圃場における発病リスクの評価手順と対策を提示する。

  • キーワード:Calonectria ilicicola、ダイズ立枯性病害、栽培履歴、発病リスク、耕種的防除
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸病害虫防除グループ
  • 代表連絡先:電話 025-523-3237
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

ダイズ黒根腐病(以下、黒根腐病)は、Calonectria ilicicolaによって引き起こされる土壌伝染性の重要病害であり、大豆の減収あるいは品質低下を引き起こす。東北地方、北陸地域では、近年低迷し続けているダイズ単収の原因の一つと考えられ、早急な対応が求められる。しかし、本病に対する登録農薬は少なく、有効な抵抗性品種は見出されていない等、本病防除に利用可能な技術が乏しい現状である。このことから、圃場の栽培履歴、圃場環境および栽培条件と黒根腐病との関係性を解析することによって、発病リスク要因を明らかにし、低リスク環境・条件下で大豆栽培することが重要と考えられる。今回、大豆作付予定の圃場における黒根腐病発病リスクの評価手順および対策について提示する。

成果の内容・特徴

  • 秋田県の52圃場、福島県の52圃場、新潟県の169圃場、富山県の79圃場で黒根腐病の調査を実施した結果、発病が認められた圃場の割合は、100%、71.2%、99.4%、70.9%である。
  • 圃場内の発病度(100はすべての株が発病程度3)が70では約30%、30では約10%減収する(越智ら2016)。発病程度2や3の重症株は、100粒重や株あたり子実粒重が減少することから、減収の抑制には重症化の回避が重要である(図1)。
  • 大豆圃場における発病リスクは、過去の発病履歴がある、大豆連作年数が長い、大豆作前水稲連作年数が短い、播種様式が平播である、種子処理剤を処理しない、播種日が早い、培土を実施する、1回目の培土時期が早い、培土回数が多い、排水性が悪い、額縁明渠を施工しない、補助暗渠を施工しない場合に高くなる(表1)。これにより、黒根腐病発病リスクを回避する作付計画や栽培管理が、本病の被害軽減対策として推奨される。被害軽減対策の一例として、中耕培土回数を削減した場合の効果を図2に示す。
  • 3の結果に基づく黒根腐病発病リスクの診断とその対策の選択手順を図3に示す。
  • 黒根腐病の診断方法、栽培履歴や圃場環境等が黒根腐病に及ぼす影響、大豆作付予定の圃場における発病リスクの評価およびその対策を「ダイズ黒根腐病のリスク診断・対策マニュアル」で公表する。

普及のための参考情報

具体的データ

図1.黒根腐病と収量の関係,図2.現地大豆圃場(右上写真:新潟県上越市)での早期中耕培土の削減による発病抑制効果,図3.大豆作付予定の圃場における黒根腐病発病リスクの診断とその対策の選択手順

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2015~2019年度
  • 研究担当者:
    赤松創、山本亮、中山則和、髙橋真実、越智直、藤井直哉(秋田県農試)、松田英樹(秋田県農試)、齋藤隆明(秋田県農試)、佐山玲(秋田県農試)、加藤雅也(秋田県農試)、遠藤央士(福島県農総セ)、小森秀雄(福島県農総セ)、古和田塁(福島県農総セ)、黒田智久(新潟県農総研作研セ)、藤田与一(新潟県農総研作研セ)、三室元気(富山県農総技セ農研)、青木由美(富山県農総技セ農研)、岩田忠康(富山県農総技セ農研)、中田均(富山県農総技セ農研)、守川俊幸(富山県農総技セ農研)、吉島利則(富山県農総技セ農研)、関原順子(富山県農総技セ農研)、萬田等(長野県農試)
  • 発表論文等: