高能率・作付規模拡大・作業分散を実現する籾米の無破砕・無脱気貯蔵技術

要約

籾米に水、乳酸菌製剤畜草2号、糖蜜の3つを添加することで、無破砕無脱気で長期貯蔵できる。能率3~4t/h(従来比150~200%)で収穫面積70haまで調製可能である。原料籾米1kg当たりの調製コストは開封・破砕後に給与またはTMR原料とすると従来比20~30%低減し9.6円となる。

  • キーワード:飼料用米、籾米サイレージ、貯蔵技術、無破砕、作業平準化
  • 担当:中央農業研究センター・飼養管理技術研究領域・作業技術グループ、飼料調製グループ、家畜飼養グループ
  • 代表連絡先:電話 0287-37-7224
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

乾燥調製を行わずに低コストに飼料用米を貯蔵する方法として、籾米サイレージ調製技術(2012年度普及成果情報「完熟期収穫の飼料用米サイレージ調製法」)の普及が進んでいる。従来法においては破砕処理の工程が必要だが、破砕機の能率は1~2t/hのものが多く、一日に処理できる量も限られている。そこで本研究では、収穫時の調製作業において籾米を破砕処理せずに高能率に一次貯蔵し、冬季など比較的時間の余裕のある時期に破砕を行い二次貯蔵する調製処理方法および作業体系を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • バケットエレベータ、スクリューオーガ等を組み合わせた作業体系を組み(図1)、収穫直後の籾米に水(目標水分30%)、乳酸菌製剤畜草2号(雪印種苗株式会社、2016年度普及成果情報「高糖分高消化性イネWCS調製に適する乳酸菌添加剤「畜草2号」」)、糖蜜(原料重当たり1%)の3つを添加して内袋入りフレコンバッグに密封することで、無破砕・無脱気でカビ等による変敗なく廃棄率0%(n=39、2017~2018年度試験合計)で籾米を貯蔵できる。
  • スクリューオーガのホッパ部で原料籾米に上記の3つを添加することで、オーガ搬送と同時に混合され、フレコンバッグ上下間の発酵品質が均一となる。脱気処理なしでもカビの増殖は認められない(表1)。二次貯蔵時には、開封後に破砕のみを実施して再密封を行うことで発酵が促進しpHが低下する。また、畜草2号を添加することで、開封後の変敗防止効果も期待できる。
  • 作業員2~3名で能率3~4t/hの連続作業が可能である(表2)。また、脱気処理なしで調製可能なため、1袋あたり1分の時間短縮が出来る。更に、従来法に機材を追加する必要がなく、雨天による収穫作業前倒しなどの理由により調製予定量が増えた場合など、緊急時の調製方法として活用可能である。
  • 対応可能な栽培面積は従来法では47haが上限だが、本作業体系では最大70ha(生籾収穫量630t)まで対応できる。その場合の調製コストは、一次・二次貯蔵合わせて原料籾米1kg当たり16.6円となる(図2)。破砕後にすぐ給与する場合やTMRの原料に利用する場合は再梱包時のフレコンバッグと内袋が不要となるため、原料籾米1kg当たり9.6円となる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:自給飼料の生産・調製を行う農業法人や耕種・畜産農家
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:飼料用米作付面積(R元年:7.3万ha、農水省統計)が対象となる。籾米サイレージは乾燥玄米よりも高水分含量となり重量が増えて輸送コストが高くなるため、耕種農家と畜産農家が近隣に存在する地域が特に対象となる。
  • その他:
    • 調製時の脱気処理は不要であるが、密封処理をしっかりと行う。内袋は厚み0.08mmを用いてピンホールが開かないように注意する。一次貯蔵時にガスが発生し内袋が大きく膨らむことがあるが破裂することはなく(n=39)、一定期間経つことで収まる。
    • 飼料用米収穫面積70haとすると、5.1kgFM/頭・日の給与量で60頭規模の酪農家6軒分を通年給与できる。
    • 低コストに運用するためには、作業機・作業人員・場所・時間の確保、一定以上の量の飼料用米の確保が必要となる。調製コストは現地の状況により異なるため、導入の際には普及所等と相談が必要である。

具体的データ

図1 無破砕籾米サイレージ調製作業体系の一例,表2 無破砕一次貯蔵および従来法籾米サイレージの作業能率,図2 調製コストと籾米の調製面積の関係

その他