アスパラガス疫病をはじめとする連作障害総合対策マニュアル

要約

アスパラガス疫病や排水性不良などによる連作障害の要因判別のための診断技術及び農薬散布や排水性改善などの対策技術を取りまとめたマニュアルである。本マニュアルに基づき圃場ごとに適切な対策を実施することで、アスパラガスの持続的な栽培が可能となり、増収・増益が見込まれる。

  • キーワード:アスパラガス、疫病、連作障害、病原菌検出、排水性診断
  • 担当:中央農業研究センター・地域戦略部・研究推進室
  • 代表連絡先:電話 050-3533-4624
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

アスパラガス栽培圃場では、栽培開始後一定の年次が経過すると欠株の増加などにより収益性や品質が低下する。アスパラガスの安定生産のためには株の更新(改植)が必要であるが、改植後に株が生育不良になったり、枯死したりするなどの連作障害が産地で問題となっている。その要因として、疫病や立枯病などの土壌病害の発生、圃場排水性や理化学性の悪化などがあげられる。そこで、疫病をはじめとする土壌病害や圃場排水性不良などアスパラガスに連作障害を引き起こす要因を判別するための診断技術及び対策技術を開発し、総合対策マニュアルとしてとりまとめて公開する。

成果の内容・特徴

  • アスパラガス連作障害の要因は圃場によって異なるため、圃場ごとに要因を診断し、その結果に応じた対策を組み合わせて実施することが重要である。本マニュアルでは、土壌中の疫病菌をはじめとする病原菌の検出及び圃場排水性の診断技術、連作障害の要因に応じた対策技術及び対策技術の実施例を記載しており、アスパラガスの連作障害防止に活用可能である。本マニュアルは、技術者向け及び生産者向けの2種類を作成している(図1)。
  • 土壌病害発生リスクの診断法は、圃場から採取した土壌を用いて連作障害の要因がどの土壌病害に起因するものかを簡易に判定できる方法である。本方法は地方自治体の普及組織や生産者が実施可能な方法である。
  • アスパラガスは湿害に弱いことから、新植・改植時の圃場の排水性は非常に重要となる。そこで、圃場排水性の良否を診断可能な簡易下層透水性診断手法を開発し、その詳細がマニュアルに記載されている(図2)。
  • 連作障害の対策技術としては、農薬散布、栽培管理、耐病性品種の利用、亜リン酸肥料の施用、カットドレーンによる圃場排水性改善、土壌消毒などの各技術の詳細が解説されている。これらの技術を圃場の状態に応じて適宜組み合わせて実施することで、アスパラガス連作障害発生が抑制される(図3)。
  • 現地実証圃場における対策技術の実施例として、福島県の実証圃場では亜リン酸肥料の施用により10aあたり約20~31.5万円増益している。長野県の実証圃場では亜リン酸肥料と排水対策を組み合わせることで10aあたり約18.3万円増益することが示されている。本マニュアルに基づき圃場ごとに適切な対策を実施することで、同様の増収・増益効果が期待される。

普及のための参考情報

  • 普及対象:アスパラガス連作障害発生地域の試験研究機関、普及指導機関、生産者等。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:主として東日本の生産地、200ha(対象地域の作付面積の20%)
  • その他:病原菌の最終的な同定のための分子生物学的手法(PCR法やARISA法)を用いた受託分析は片倉コープアグリ株式会社にて実施している。

具体的データ

図1 マニュアルの表紙とコンテンツ例,図2 簡易下層透水性診断手法,図3 アスパラガス連作障害の診断・対策フロー図

その他

  • 予算区分:その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:
    浦嶋泰文、園田高広(酪農学園大)、古屋廣光(秋田県立大)、戸田武(秋田県立大)、畑有季(福島県農総セ)、菅野英二(福島県農総セ)、金丸雄太郎(福島県農総セ)、五十嵐秀樹(福島県農総セ)、酒井浩晃(長野県野菜花き試)、鮎澤純子(長野県野菜花き試)、古田岳(長野県野菜花き試)、石川美友紀(片倉コープアグリ)、山田茂(片倉コープアグリ)、紀岡雄三(片倉コープアグリ)、野口勝憲(片倉コープアグリ)
  • 発表論文等:
    農研機構(2019)「アスパラガス疫病等をはじめとする連作障害総合対策マニュアル」(2019年3月18日)