大豆作における茎葉処理型除草剤を核とした難防除雑草の総合的防除技術マニュアル

要約

大豆作の難防除雑草マルバルコウ、ヒロハフウリンホオズキなどの防除に有効な茎葉処理型除草剤を核とした総合的防除技術を解説したマニュアルである。難防除雑草のまん延防止には、早期発見、早期対策が重要なことからその重要性と草種識別のポイントを概説している。

  • キーワード:大豆、外来雑草、マルバルコウ、マルバアメリカアサガオ、ヒロハフウリンホオズキ
  • 担当:中央農業研究センター・生産体系研究領域・雑草制御グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-8514
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、外来雑草を中心とした難防除雑草の大豆畑への侵入が問題となっている。これら難防除雑草の侵入・まん延は壊滅的な被害をもたらすため、大豆の収穫を放棄せざるえない生産現場が常発・拡大している。また、まん延後の防除では非常に多くの労力とコストを費やすこととなる。そのため、これら草種の総合的な管理体系の構築は急務である。そこで、本研究では、大豆の減収被害をもたらしている難防除雑草のうち、マルバルコウ、マルバアメリカアサガオ、ヒロハフウリンホオズキなどを対象に新たに農薬登録された茎葉処理型除草剤を核とした総合的防除技術、さらにマルバルコウ、マルバアメリカアサガオなど畦畔からの侵入拡大が懸念される草種については侵入防止に有効な畦畔管理技術を開発し、生産現場で容易に取り組めることを目的に本技術をわかりやすく解説したマニュアルを作成する。

成果の内容・特徴

  • 本マニュアル(図1)は、難防除雑草であるマルバルコウ、マメアサガオ、マルバアメリカアサガオ、アレチウリ、ヒロハフウリンホオズキ、カロライナツユクサ、イヌホオズキを対象にフルチアセットメチル乳剤、ベンタゾン液剤などの茎葉処理型除草剤、狭畦密植栽培、機械除草、中耕培土などを適宜組み合わせた総合的防除技術(表1はマルバルコウ、マメアサガオについて例示)を現地で行った実証試験等の結果にもとづいて取りまとめたものである。また、各防除技術の導入前後のコスト比較も行っている。
  • 難防除雑草はほ場周辺に定着し、ほ場内への侵入源となることから、マルバルコウ、マメアサガオ、マルバアメリカアサガオを対象に水田輪作地帯において畦畔の植生を維持しながら難防除雑草の侵入防止に有効な水稲栽培時の畦畔管理技術についても解説する(表2)。
  • 難防除雑草のまん延防止には、早期発見、早期対策が重要なことから、マニュアルにはその重要性について記載するとともに、草種識別のポイントを概説する。
  • 本防除技術は、茎葉処理型除草剤による初期薬害程度が小さい品種の選定、高い苗立ち率の確保と良好なダイズの生育の確保が前提とした技術である。
  • 本マニュアルは、「診断に基づく大豆栽培改善技術導入支援のためのシステムhttps://www.naro.affrc.go.jp/project/research_activities/laboratory/carc/134256.html(2020年3月公開)(2019年度普及成果情報)」の解説部となる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:大豆生産者、営農指導員、普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:北海道を除く難防除雑草が発生する大豆ほ場16,000ha(対象地域の作付面積の15%)
  • その他:茎葉処理型除草剤は大豆品種により初期薬害の程度が大きく異なるため、事前に除草剤メーカーや農研機構などの情報を確認する。また、ビスピリバックナトリウム塩液剤は水稲が作付けされた畦畔のみ使用できるため、大豆圃場周辺部に散布することはできない。

具体的データ

図1 難防除雑草の防除マニュアル(表紙),表1 マルバルコウおよびマメアサガオの圃場内の防除体系,表2 マルバルコウ、マメアサガオ、マルバアメリカアサガオの畦畔での防除体系

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2015~2019年度
  • 研究担当者:
    小荒井晃、小林浩幸、川名義明、中山壮一、浅見秀則、橘雅明、石岡厳、窪田潤、住吉正、大段秀記、黒川俊二、澁谷知子、井原希、松尾光弘(宮崎大学)、高草木雅人(岩手県)、小野直毅(岩手県)、中西商量(岩手県)、長谷川聡(岩手県)、高橋好範(岩手県)、及川光史(岩手県)、藤田智美(岩手県)、田村和彦(岩手県)、吉田宏(岩手県)、小野寺健一(岩手県)、高橋昭喜(岩手県)、八重樫耕一(岩手県)、河野礼紀(大分県)、山本真梨子(大分県)、柿原千代文(大分県)、近乗偉夫(大分県)、山木義賢((公財)日本植物調節剤研究協会)、土田邦夫((公財)日本植物調節剤研究協会)、山口晃((公財)日本植物調節剤研究協会)、大隈光善((公財)日本植物調節剤研究協会)、西田勉((公財)日本植物調節剤研究協会)、半田浩二((公財)日本植物調節剤研究協会)、古賀巧樹((公財)日本植物調節剤研究協会)、中下真吾((公財)日本植物調節剤研究協会)
  • 発表論文等:
    農研機構(2020)「診断に基づく大豆栽培改善技術導入支援マニュアル-大豆栽培における難防除雑草の防除-」
    https://www.naro.affrc.go.jp/project/research_activities/laboratory/carc/134256.html (2020年3月公開)