薬用作物カンゾウ、トウキ、センキュウ栽培における機械除草マニュアル
要約
カンゾウ、トウキ、センキュウ栽培において手取り除草時間を慣行の50%以下に削減できる機械除草を核とした総合的防除技術を解説したマニュアルである。また、生産者が容易に取り組めるよう株間用レーキセットの選定、レーキセットの調整法などのポイントを概説している。
- キーワード:カンゾウ、トウキ、センキュウ、雑草防除、機械除草
- 担当:中央農業研究センター・生産体系研究領域・雑草制御グループ
- 代表連絡先:電話 029-838-8514
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
現在、日本では生薬のほとんどは海外からの輸入に頼っているが、漢方薬の安定生産を維持するためには、国産生薬の安定供給を図る必要がある。しかし、生薬の原料となる薬用作物は登録除草剤がほとんど無く、機械化も進んでいないため、生産者は過酷な手取り除草を強いられている。これが薬用作物の栽培面積の拡大の大きな制限要因となっている。そこで、本研究では、カンゾウ、トウキ、センキュウを対象作物として除草時間の50%以上の削減と軽労化を目指して、機械除草を核とした雑草防除体系を開発し、生産現場で容易に取り組めることを目的に本技術をわかりやすく解説したマニュアルを作成する。
成果の内容・特徴
- 本マニュアル(図1)は、薬用作物カンゾウ、トウキ、センキュウ栽培を対象に機械除草(図2)を核に農薬登録のある除草剤、中耕培土などを適宜組み合わせた防除技術(図3)を試験場内および現地で行った試験データ等にもとづいて取りまとめたものである。本防除技術による収量や品質への影響はない。生産者が容易に取り組めるよう株間用レーキセットの選定、レーキセットの調整法などについても解説する。
- カンゾウ栽培では除草剤、7回程度の機械除草および萌芽前の中耕培土を組み合わせた防除により手取り除草時間を50%以下、トウキ栽培では除草剤および2-3回程度の機械除草を組み合わせた防除により手取り除草時間を50%以下,センキュウ栽培では除草剤および2回程度の機械除草を組み合わせた防除により手取り除草時間を20%以下に削減できる(図4)。
- カンゾウ栽培では毎週1回の機械除草と萌芽前の中耕培土により除草剤を使用しなくても手取り除草時間を10%以下に削減できる。
普及のための参考情報
- 普及対象:薬用作物生産者、営農指導員、普及指導機関
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の薬用作物の作付面積のうち20ha
- その他:本防除体系を導入する場合、除草剤の使用は必ず契約する生薬メーカー等の担当者に使用の可否を確認する。
具体的データ

その他
- 予算区分:委託プロ(収益力向上)
- 研究期間:2015~2019年度
- 研究担当者:
小荒井晃、小林浩幸、根本英子、澁谷幸憲、村上則幸、菱田敦之((国研)医薬基盤・健康・栄養研究所)、五十嵐元子((国研)医薬基盤・健康・栄養研究所)、林茂樹((国研)医薬基盤・健康・栄養研究所)、川原信夫((国研)医薬基盤・健康・栄養研究所)、小野直毅(岩手県)、高草木雅人(岩手県)、長谷川聡(岩手県)、高橋好範(岩手県)、黒瀬真(奈良県)、大谷正孝(奈良県)、西野精二(奈良県)、浅尾浩史(奈良県)、米田健一(奈良県)、小林甫(奈良県)、杉山高世(奈良県)、安川人央(奈良県)、三島康宏((株)キュウホー)、佐藤匡剛((株)キュウホー)、近藤裕幸((株)キュウホー)、新井洋貴((株)キュウホー)、小柳裕和((株)ツムラ)、神保智一((株)ツムラ)、櫻井美希((株)ツムラ)、
- 発表論文等:
農研機構(2020)「薬用作物の機械除草マニュアル-カンゾウ、トウキ、センキュウ」