LEDや誘引剤トラップを用いたダイズカメムシ類の簡易発生予察技術

要約

ダイズカメムシ類の種構成は地域により大きく異なるが主要種は4種である。ミナミアオカメムシやアオクサカメムシの発生予察にはLEDトラップ、ホソヘリカメムシやイチモンジカメムシの発生予察には誘引剤トラップによる調査が有効である。

  • キーワード:LEDトラップ、誘引剤、発生予察、ダイズ
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸病害虫防除グループ
  • 代表連絡先:電話 025-526-3237
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ダイズカメムシ類による子実加害により、ダイズの品質や収量が低下する。ダイズカメムシ類の圃場調査では、防除所職員らが見とりや払い落とし法によりカメムシの発生量を調査するが、本法には職員の圃場内でのカメムシ調査に時間と労力の負担が大きく伴う。また、調査者の慣れ不慣れによる経験や、調査時の天候しだいでは正確な発生量を把握できない問題があり、払い落とし法などよりも簡便で定量的な調査法の開発が求められている。そこで、LEDや誘引剤トラップを利用した簡易なダイズカメムシ類の発生予察法を開発することで調査員の負担軽減を図るとともに、発生予察の高度化を目指す。

成果の内容・特徴

  • ダイズを加害するカメムシ類の種構成は地域により異なるが、主要な種はホソヘリカメムシ、イチモンジカメムシ、ミナミアオカメムシ、アオクサカメムシの4種である(図1)。
  • ミナミアオカメムシやアオクサカメムシの被害推定にはLEDトラップ(UV84球使用)(図2)を利用することで、払い落とし法の代替手段として有効である。カメムシ2種それぞれの7月から8月までの誘殺数から、収穫後のダイズにおける被害粒の割合を推定できる(図3)。
  • ホソヘリカメムシやイチモンジカメムシの被害推定には誘引剤の利用が有効であり、カメムシ2種それぞれの8月の誘殺数から、収穫後のダイズにおける被害粒の割合を推定できる(図4)。
  • LEDや誘引剤トラップを用いた発生予察技術とともに、ダイズを加害するカメムシ類の主要な種の生態や子実への被害状況、薬剤散布などによる防除対策について解説する「ダイズカメムシ類対策マニュアル」を作成し公表する。

成果の活用面・留意点

  • ミナミアオカメムシやアオクサカメムシ用のLEDトラップは興南施設管理株式会社、ホソヘリカメムシやイチモンジカメムシの誘引剤やトラップは富士フレーバー株式会社よりそれぞれ購入可能である。

具体的データ

図1 ダイズカメムシ類の県別の種構成,図2 開発したLEDトラップ,図3 アオクサカメムシのLEDトラップ誘殺数と推定被害粒率との関係,図4 ホソヘリカメムシのフェロモントラップ誘殺数と推定被害粒率との関係

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2015~2019年度
  • 研究担当者:
    遠藤信幸、竹内博昭、渋谷和樹、本田善之(山口農林総セ)、岩本哲弥(山口農林総セ)、西野実(三重農研)、田中千晴(三重農研)、笹山哲央(三重農研)、大仲桂太(三重農研)、田口裕美(三重農研)
  • 発表論文等:農研機構(2020)「ダイズカメムシ類対策マニュアル