国内産ダイズ茎疫病菌株の接種結果から推定される国内ダイズ品種の抵抗性の特徴

要約

「エンレイ」「おおすず」「納豆小粒」「スズマル」は、国内で有効な茎疫病抵抗性遺伝子を持たない。「タチナガハ」「ミヤギシロメ」「里のほほえみ」は、抵抗性遺伝子を共有する可能性が高い。「東山231号」「ユキホマレ」は多くの菌株に罹病性を示さず、遺伝資源として期待できる。

  • キーワード:ダイズ茎疫病、抵抗性、ダイズ、品種、Rps1a
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸病害虫防除グループ
  • 代表連絡先:電話 025-526-3237
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

集中豪雨等で突発的な流行が懸念されるダイズ茎疫病に対して、低コストで効果的な防除対策として抵抗性品種の利用が期待される。しかし、国内では抵抗性遺伝子を導入した品種はなく、抵抗性品種育成に必要な抵抗性遺伝子に関する情報がほとんどない。
本研究では、在来種および国内外で育成された36品種・系統と米国において病原型の判別に用いられるダイズ系統に、国内で収集した病原型に違いが見られるダイズ茎疫病菌54菌株を接種して、誘導される抵抗性反応を解析し、主要な栽培品種の抵抗性の特徴や、抵抗性品種育成のための遺伝資源として期待できる品種・系統等の情報を得る。

成果の内容・特徴

  • 「エンレイ」、「おおすず」、「納豆小粒」、「スズマル」は、全ての菌株に対して抵抗性反応(発病率20%以下)を示すことがなく、国内で有効な抵抗性遺伝子は保有していない(図1青矢印、表1)。 一方、「トヨスズ」とその母親の「ゲデンシラズ1号」、「フクユタカ」による戻し交雑により育成された「フクユタカA1号」、「エンレイ」と「フクユタカ」から育成された「サチユタカ」のように血縁関係にある品種間で抵抗性反応に違いがみられることから、国内のダイズ品種・系統の中には、複数の抵抗性遺伝子を保有するものもあると推察される(図1、表1)。
  • 供試したダイズ品種・系統36のうち11品種・系統では、抵抗性遺伝子Rps1aを保有する病原型判別用ダイズが抵抗性を示す菌株に対しては、共通して抵抗性反応を示す(図1赤矢印)。このことから、栽培品種である「タチナガハ」、「ミヤギシロメ」、「里のほほえみ」を含むこれらの11品種・系統は、Rps1aに類似の抵抗性遺伝子を保有する可能性が高い(図1、表1)。
  • 「ユキホマレ」、「東山231号」は、多くの接種菌株に対して罹病性を示さず(図1右側2列、表1)、国内に存在するダイズ茎疫病菌に対して効果的な抵抗性遺伝子を保有する可能性が高い。

成果の活用面・留意点

  • 「エンレイ」、「おおすず」、「納豆小粒」、「スズマル」は、ダイズ茎疫病に対して抵抗性をもたないことが明らかとなり、抵抗性遺伝子の導入などの対策が求められる。
  • 「タチナガハ」、「ミヤギシロメ」、「里のほほえみ」では抵抗性遺伝子が共通する可能性から、いずれかに病原性を獲得したダイズ茎疫病菌は、他の2品種にも病原性を獲得した可能性が高いことに留意する。
  • 「ユキホマレ」、「東山231号」は、今後のダイズ茎疫病抵抗性育種における遺伝資源として期待できる。

具体的データ

図1 ダイズ品種・系統への日本産ダイズ茎疫病菌の接種試験,表1 栽培品種が示す抵抗性反応とその特徴

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
  • 研究期間:2014~2019年度
  • 研究担当者:髙橋真実、松岡淳一、山田哲也、河野雄飛、山田直弘(長野県野菜花き試)、髙橋浩司、森脇丈治、赤松創
  • 発表論文等:高橋ら(2019)北陸病虫研報68:45-50