側条施肥機が付いた田植機、および直播機を利用した大区画水田の追肥作業

要約

大区画水田圃場の追肥作業の軽労化を目的に、側条施肥機が付いた田植機、および直播機を利用して水稲の追肥用施肥機が製作できる。この追肥用施肥機は、肥料散布幅を約10m確保し、大区画乾田直播圃場試験において27~38分/haの作業能率で追肥作業を行うことができる。

  • キーワード:大区画水田、追肥作業、側条施肥、田植機、直播機
  • 担当:中央農業研究センター・水田利用研究領域・北陸土壌管理グループ
  • 代表連絡先:電話 025-526-3237
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、作業能率の効率化を目的に水田圃場の大区画化が進み、こうした大区画水田圃場における追肥作業では従来の30a規模圃場で行われていた背負い動力散布機を利用した追肥作業が困難となっている。追肥作業の軽労化技術として流入施肥、無人ヘリを利用した肥料散布、乗用管理機搭載型の粒状資材散布機などがあるが、これらの利用は一部に留まっている。
そこで水稲農家への普及率の高い側条施肥が付いた田植機、および直播機を利用した追肥用施肥機を製作し、新たな機械導入コストをかけずに高精度な水稲追肥作業を可能とする。

成果の内容・特徴

  • 田植機の側条施肥機は、長さ1m、25mm径の汎用アルミパイプを吐出パイプとして接続することで、電動ブロアの風力を利用して粒状肥料を片側5m幅、全体10m幅で撒布できる(図1)。
  • 追肥用施肥機は、移植ユニット、直播ユニットにアルミパイプ構造材(SUS社グリーンフレーム、及びコネクタ類)とL字アルミ板などで構成されるフレームを取り付け、サクションホースを用いて施肥機の肥料搬送ホースと吐出パイプを接続する(図1、図2)。
  • 6条型田植機では、内側の吐出パイプ4本は肥料の飛距離確保とホースの取り回し易さから、交差させてX状に配置する(図2)。外側の吐出パイプ2本は走行時に折りたためるように可動式のコネクタを利用してフレームに取り付ける。直播機を利用した追肥用施肥機は、製作するために必要な部品が少なく、ホースの取り回しも容易であるため、製作し易い。
  • 吐出パイプに用いるアルミパイプは、パイプ端を1.5cm厚につぶし、厚さ1mm、幅3cm、長さ3cm以上のゴム板を取り付けることで、飛距離を損ねずに肥料の拡散幅を確保できる(図3)。
  • 施肥ユニットの出口毎に若干の風量の差があるため、均一な施肥ができるように吐出パイプの向きを調整して施肥作業を行う。側条施肥ユニットの施肥量は、散布幅を換算して設定する。
  • 追肥用施肥機の作業能率は、60a~2.5ha規模の乾田直播圃場で33~38分/haである(表1)。
  • 試作に要した部品の費用は3万円以下である。部品の加工も容易であり、農家が自ら製作することができる。装備の着脱に要する時間は1時間以内である。

成果の活用面・留意点

  • 田植機はI社PZ60-F、直播機はK社NDS-8F 鉄まきちゃんを使用した。なお、供試した田植機は移植ユニットを車体中央に配置後にドライブシャフトを取り外す必要がある。機種により肥料の繰り出し機構が異なるため、追肥用施肥機の試作に適さない場合がある。
  • 側条施肥機の施肥量は、田植機の施肥幅を追肥散布幅10mに換算して設定する必要がある。
  • 追肥施肥量が多くて作業速度が速い条件では、ホース内に詰まりが発生し易い。また、吐出パイプの向きの調節が不十分で施肥量が多い場合は、施肥ムラが発生しやすい。
  • 供試した田植機、直播機の最低地上高は乗用管理機の70cmより低い40cm程度で、圃場条件によっては機体が水稲に大きく干渉し、生育、収量に影響する可能性がある。

具体的データ

図1 側条施肥田植機を利用した追肥用施肥機の模式図,図2 試作した追肥用施肥機,図3 追肥用施肥機の吐出パイプ先端に取り付けたゴム板のはみ出し長さが肥料散布幅に及ぼす影響,表1 大区画乾田直播水田圃場における追肥用施肥機の作業例

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2017、2019年度
  • 研究担当者:関矢博幸、木村秀也、齋藤秀文
  • 発表論文等:関矢ら(2019)農業食料工学東北支部報、66:21-24