調製方法の異なる籾米の飼料特性と泌乳牛への給与

要約

籾米のルーメン内での分解性は、乾燥籾米と比較しサイレージの方が高い。泌乳牛用TMR(完全混合飼料)中に籾米を17%程度混合して給与した場合では、飼料摂取量、泌乳成績およびルーメン液性状について調製方法の違い(乾燥またはサイレージ)による影響は認められない。

  • キーワード:籾米サイレージ、破砕、飼料特性、泌乳牛、泌乳成績
  • 担当:中央農業研究センター・飼養管理技術研究領域・家畜飼養グループ
  • 代表連絡先:電話 0287-37-7224
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、国産濃厚飼料となる飼料用米の生産が拡大してきている。飼料用米を籾米として給与する場合、調製にコストのかかる乾燥籾米よりも低コストで調製可能なサイレージとしての利用が増加しつつある。しかしながら、籾米サイレージの飼料特性などは明らかとなっていない。
また籾米をサイレージ調製する際には、一般的に破砕してからフレコンバック等に梱包するという作業工程を取るが、破砕作業に時間を要するため調製時の作業能率の低下が問題となっている。これを解決するため、調製時の破砕をせずに籾米を丸粒のまま梱包する方法が開発されている。
そこで本研究では、乾燥籾米と調製時の破砕あり、または破砕なしの2種類の籾米サイレージについて、籾米の調製方法の違いが飼料成分やルーメン分解性に及ぼす影響を明らかにするとともに、籾米を含むTMRを泌乳牛へ給与し、泌乳成績への影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 各籾米の化学成分について、乾物含量は乾燥籾米で87.0%、籾米サイレージで66.3%(調製時に破砕あり)および70.6%(調製時に破砕なし)である。なお籾米サイレージは、調製時に水分含量約30%となるよう加水している。各籾米の粗蛋白質含量は乾物当たり7.3-7.5%、NDFom(中性デタージェント繊維)含量は乾物当たり14.9-15.4%、でんぷん含量は乾物当たり66.6‐67.2%である(表1)。
  • ルーメン内の有効分解率は、乾物については乾燥籾米(乾燥して保管、供試直前に破砕:乾燥区)で54.0%、籾米サイレージで80.3%(調製時に破砕あり:破砕あり区)および71.5%(調製時に破砕せず、供試直前に破砕:破砕なし区)である。乾燥籾米と比較し、サイレージではルーメン内の分解性が高まる。また、調製時に破砕すると破砕なしで調製する場合よりもルーメン内の分解性は高くなる(表2)。
  • 乾燥籾米(乾燥区)または籾米サイレージ(破砕あり区および破砕なし区)を泌乳中後期牛にTMR中乾物で17%程度混合して給与した場合では、TMR摂取量および泌乳成績に違いは認められない(表3)。またルーメン液性状にも調製方法の違いによる影響は認められない(表4)。
  • 泌乳牛用飼料においては、籾米を乾物で17%程度まで混合して給与できる。

成果の活用面・留意点

  • 乾燥籾米、籾米サイレージを泌乳中期以降の乳牛に給与するときの基礎データとして利用できる。
  • 本試験では、籾米をTMRとして給与した。
  • 本試験では、籾米サイレージの長期間給与が泌乳成績等に及ぼす影響については検討していない。

具体的データ

表1 供試籾米の化学成分および発酵品質,表2 調製方法の違いとルーメン内有効分解率,表3 泌乳牛のTMR摂取量および泌乳成績

その他

  • 予算区分:交付金、経営体プロ
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:神谷裕子、宮地慎、井上秀彦、川出哲生、遠野雅徳、小林寿美、江口研太郎、鈴木知之
  • 発表論文等:
    • Miyaji et.al.(2018)Animal Science Journal 89:972-978
    • Miyaji et.al.(2019)Animal Science Journal 90:649-654.
    • 農研機構(2020)水田飼料作を基盤とする資源循環型牛乳・牛肉生産の手引き(牛乳生産技術編)