縦軸型ハローを用いたトウモロコシ-イタリアンライグラス二毛作の周年簡易耕栽培体系

要約

飼料二毛作で、トウモロコシは縦軸型ハロー耕うん同時播種を行い、イタリアンライグラスは縦軸型ハローで簡易耕播種することで、作業時間と工程を減らすことができる体系である。同一圃場で複数年続けても、収量を低下させることなく繰り返し行うことができる。

  • キーワード:飼料二毛作、トウモロコシ、イタリアンライグラス、縦軸型ハロー、簡易耕
  • 担当:中央農業研究センター・飼養管理技術研究領域・作業技術グループ
  • 代表連絡先:電話 0287-37-7224
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

トウモロコシ-イタリアンライグラス二毛作体系では、慣行耕うんとしてプラウによる反転耕が行われてきた。そのため、耕うんから播種までの作業工程と必要な機械や時間が多くなるという問題があり、人手不足解消に貢献する作業工程の縮減や作業時間の短縮技術の開発が求められている。
そこで、本研究では夏作トウモロコシでは作業時間を短縮できる縦軸型ハロー耕うん同時播種機を応用利用することにより、周年簡易耕栽培が可能な体系を構築する。

成果の内容・特徴

  • 本体系は、慣行の耕うん作業体系のうちプラウによる反転耕を省いた砕土のみの簡易耕体系である(図1)。縦軸型ハロー耕うん同時播種は、2014年普及成果情報「二毛作トウモロコシの播種作業時間を大幅に削減可能な耕うん同時播種技術」で公表した。慣行耕うん体系と比べ、作業工程と作業時間を減らすことができる。トウモロコシでは一日8時間で4、5月の繁忙期30日間での作業が可能であり圃場間移動がほとんどないと仮定して試算すると約17ha→42ha、イタリアンライグラスでは9、10月の30日間で32ha→54haの規模拡大が期待できる。耕起から播種までの時間も大幅に減らせるので、降雨等による作業の遅延リスクも低減できる。
  • 縦軸型ハローを用いて一度だけ耕うんした場合、イタリアンライグラス播種前の砕土率は慣行耕うんより5%程度低いが、発芽と初期生育に必要な70%を超えている(表1)。また、トウモロコシ播種前の砕土率も88.4%と70%を超えており、縦軸型ハローを用いた耕うんは一度のみで十分に効果を発揮する。
  • トウモロコシ播種前の土壌硬度を示す土壌貫入抵抗は、簡易耕では5cm以上の深さで慣行耕うんより大きくなるが、15cmまでは不耕起よりも小さく(図2)、縦軸型ハローの簡易耕うんで、土壌表層の機械による踏みしめの影響を除去できることが示されている。
  • 4年間の実規模試験で行った2圃場(A圃:25~50a、B圃:40~100a)による周年収量では、簡易耕と慣行耕うんで収量に有意な差はなく、複数年継続しても収量は維持できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、関東以西のトウモロコシとイタリアンライグラスを飼料二毛作で作付けしている圃場で有効である。
  • データは栃木県那須地域で取得し、100kWのトラクタで耕深は8~10cmとした。トウモロコシ、イタリアンライグラスともに両作業体系開始前に耕うん前に堆肥を3t/10a施用し、作業手順の施肥時に高度化成14-14-14を80kg/10a施用した。
  • 4年間の試験期間では収量低下は見られなかったが、同時に行った不耕起播種では2年目で収量の低下が見られた。15cm以上の深さの土壌硬度は簡易耕と不耕起で同様の傾向が見られたため、耕深が浅くなった場合に10cm程度の深さまで土壌の締め固めが起こり、収量が低下する危険性が残されている。土壌がトラクタや作業機等で締め固められた場合、プラウによる反転耕を行うことで収量が回復することを確認している。

具体的データ

図1 夏作と冬作の作業手順と使用機械,表1 イタリアンライグラス播種前の耕うん法と砕土率,図2 トウモロコシ播種直後の土壌貫入抵抗値,図3 4年間の慣行耕うんと周年耕体系の収量比較

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2016~2019年度
  • 研究担当者:住田憲俊
  • 発表論文等:住田(2020)日草誌、66(2)、73-78