圃場に上から飛来侵入するカラスを防ぐには透明のナイロン釣り糸を1m間隔で平行に張る

要約

飛来侵入するカラスに対する線状の障害物として、視認性の高い有色の針金に比べて透明のナイロン釣り糸(テグス)のほうが侵入抑制効果が高く、透明ナイロン釣り糸を圃場の上面に1m間隔で平行に設置すると実用に十分な侵入抑制効果がある。

  • キーワード:カラス、透明ナイロン釣り糸、テグス、果樹園、飛来侵入
  • 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・鳥獣害グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-8481
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農作物の鳥害を防ぐために鳥を脅かして追い払う方法には持続的な効果がない。物理的に侵入を防ぐ防鳥網は確実な対策であるが、設置コストが課題である。糸やワイヤー等の線状の障害物をある程度の間隔で設置すれば、鳥の侵入に対して物理的な障壁となって、防鳥網よりも簡易で安価な対策となることが期待される。しかし、糸やワイヤーを設置しても侵入される場合があり、有効な設置方法は鳥種や対象環境によって異なると考えられる。
そこで、本研究では、果樹園におけるカラス被害対策として、簡易で有効な糸の設置技術を開発することを目的とし、飼育下の試験によって有効な設置条件を明らかにし、果樹園での簡易な設置方法の野生カラスに対する侵入抑制効果を検証する。

成果の内容・特徴

  • 飼育カラスを用いた、線状の障害物を平行に設置して間隔を段階的に狭める試験において、視認性の高い有色の針金に比べて透明のナイロン釣り糸のほうが侵入抑制効果が高く、透明ナイロン釣り糸ではカラスの翼開長と同等程度である1m間隔で侵入回数が大幅に少なくなる(図1)。
  • 果樹園での設置には、上面に1m間隔で平行に透明ナイロン釣り糸を張り、側面には防鳥網を張る方法が簡易であり、市販の一般的な資材を使って農業者が自力で施工できる。この設置方法の野生カラスに対する効果を検証する野外試験において、設置期間中の侵入回数は1/250以下、試験餌の消費量は1/30以下であり、実用に十分な侵入抑制効果を確認している(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 果樹園における設置方法は、果樹園のカラス対策「くぐれんテグス君」として設置マニュアルを公開している。
  • 1m間隔で平行に設置する透明のナイロン釣り糸は、果樹園でのカラス被害対策には十分な侵入抑制効果をもつが、畜舎や生ゴミ集積所等のカラスの侵入意欲が高い場所では、防鳥網などでカラスが完全に侵入できないようにする必要がある。
  • 透明ナイロン釣り糸は、20号(線径0.74mm)前後が適している。細すぎるものは野鳥が絡まる事故が起こりやすい、劣化が早い等の問題があり、太すぎるものは結びにくい、価格が高い等の問題がある。
  • 中央農業研究センター動物実験委員会承認番号[No.21-1]

具体的データ

図1 有色の針金または透明ナイロン釣り糸の設置間隔とカラス侵入回数の関係,図2 野生カラスに対する効果検証試験における侵入回数と試験餌(ドッグフード)の消費割合

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(産学官連携)
  • 研究期間:2010~2019年度
  • 研究担当者:吉田保志子、佐伯緑、百瀬浩
  • 発表論文等:Yoshida H. et al. (2019) Appl. Entomol. Zool. 54:399-408