高接ぎ木法はネコブセンチュウにより助長されるトマト青枯病を抑制する

要約

ネコブセンチュウが感染したトマトでは、根こぶ部分に青枯病菌が集中して分布し、青枯病の発病が助長される。青枯病抵抗性台木に高接ぎ木したトマトでは、ネコブセンチュウによる青枯病の発病助長を顕著に抑制する。

  • キーワード:高接ぎ木、トマト、サツマイモネコブセンチュウ、青枯病、複合感染
  • 担当:中央農業研究センター・虫・鳥獣害研究領域・線虫害グループ
  • 代表連絡先:電話 050-3533-4624
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ネコブセンチュウ(以下、線虫)の感染はトマト青枯病の発病を助長することが知られている。しかし、その際の両病害虫の動態が明らかにされておらず、防除のための情報が得られていない。そこで、線虫に感染したトマトの根、形成された根こぶおよび茎部における青枯病菌の分布を解析することにより、線虫による青枯病の発病助長機作の一端を明らかにする。また、青枯病防除技術として有効である抵抗性台木の高接ぎ木法について、線虫により助長された青枯病に対する抑制効果を検討する。

成果の内容・特徴

  • 線虫が感染したトマト根部での緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識した青枯病菌の分布をみたところ、線虫に感染したトマトの根において、高い割合(根の本数の割合)で病原細菌が観察される(データ略)。さらに、線虫が形成する根こぶ部分において、青枯病菌が集中的に確認される(図1)。
  • 線虫が感染したトマトでは、茎部での青枯菌の移行が促進されることで(図2)、線虫が無感染の場合に比べ青枯病の発病が助長される(図3)。
  • 青枯病強抵抗性の台木を高接ぎ木したトマトでは、線虫が感染している場合でも青枯病の発病を抑制する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 高接ぎ木法は、慣行接ぎ木(接ぎ木部位:子葉上)より高い位置(同:地際から10cm以上)に接いだ苗を利用した防除技術であり、台木品種の持つ植物体内での青枯病菌の移行と増殖の抑制能力を最大限に活用することで、穂木への青枯病菌の感染、発病を抑制する。
  • 高接ぎ木法は、線虫と青枯病菌の複合汚染圃で使用する場合においても青枯病の発病抑制効果が期待できる。
  • 高接ぎ木による発病抑制効果は、青枯病にのみ期待される。根部の線虫感染による生育不良や萎凋に対する抑制効果はない。

具体的データ

図1 線虫感染トマト根部におけるGFP標識した青枯病菌の分布,図2 線虫感染したトマトの茎部からの青枯病菌の検出率,図3 線虫感染した慣行接ぎ木トマトにおける青枯病の発病程度,図4 線虫感染した高接ぎ木トマトの青枯病発病株率

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(SIP)
  • 研究期間:2014~2019年度
  • 研究担当者:植原健人、中保一浩、立石靖、古澤安紀子(群馬県)、池田健太郎(群馬県)、酒井宏(群馬県)、境雅夫(鹿児島大学)
  • 発表論文等:
    • Uehara T. and Nakaho K.(2018) Journal of Phytopathology 166:53-58
    • Furusawa A. et al.(2019) Journal of Phytopathology 167:338-343