多様な遺伝子組換え食品に対応可能な検査法の開発

要約

遺伝子組換え(GM)食品の表示制度を科学的に検証する方法として検査法が公表され、広く利用されている。GMトウモロコシの種類の増加に対応できる検査法を開発する。一連の検査法は、2016年11月に消費者庁検査法に採用されている。

  • キーワード: 遺伝子組換え食品、掛け合わせ種子、グループ検査法、リアルタイムPCRアレイ法
  • 担当: 食品研究部門・食品分析研究領域・信頼性評価ユニット
  • 代表連絡先: 電話 029-838-7991
  • 分類: 普及成果情報

背景・ねらい

「安全性審査済みの遺伝子組換え食品の検査方法」は「食品表示基準について」(平成27年3月30日付け消食表139号)の別添により定められており、分別生産流通管理がなされた作物の検査に用いられている。しかし、トウモロコシの安全性審査済みGM系統およびそれらを複数掛け合わせた(スタック)品種の増加が著しいことから、従来の検査法で混入を見落とす可能性、逆に混入率を過大評価する可能性が指摘されている。そこで、トウモロコシのスクリーニング検査法に、新たなGM系統を対象にした検査法を追加する。さらに、スクリーニング検査で混入率が閾値の5%を越える可能性がある場合の確定検査として、スタック品種の混入に影響を受けない検査法を追加する。

成果の内容・特徴

  • 流通が確認されているGMトウモロコシMIR604系統およびMIR162系統は、カリフラワーモザイクウィルス由来35Sプロモーターを含まないため、従来のスクリーニング検査法では検出されない。両系統に特異的な定量分析法を開発したことで、検査対象の見落としがないスクリーニング検査が可能である。
  • グループ検査法は、以下の3つのステップから構成される分析法である:(1)トウモロコシ穀粒を規定粒数ずつ含むグループを規定数用意する;(2)グループ毎にGM穀粒の混入の有無についてリアルタイムPCRで定性分析する;(3)供試した全グループのPCR結果から統計学的にGM混入率を評価・推定する(図1)。スクリーニング検査法では、スタック品種の混入により混入率が過大評価されるが、グループ検査法では、スタック品種の混入の如何にかかわらず、混入率が閾値の5%を超過しているか否か正確に判断することができる。
  • リアルタイムPCRアレイ法は、PCR用の96ウェルプレートで一度に多種類のリアルタイムPCRを実施し、多くの標的を同時に検出する分析手法である(図2)。トウモロコシの安全性審査済みGM系統を一斉に定性検知することで、いずれのGM系統が混入しているか最終的に特定することができる。本手法は、必要に応じて標的配列の加除が自由にできるため、検査法の更新が容易であり、今後予想される検査対象系統の増加にも対応することができる。
  • 作成した分析マニュアルが、消費者庁から検査法として公表されており、上記1~3の一連の検査を滞りなく実施することができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:公的検査機関、民間検査機関、加工食品製造者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:国内全域、米国等日本向け分別生産流通管理トウモロコシ等輸出国(遺伝子組換えトウモロコシ等生産国)
  • その他:作成したマニュアルの一連の検査法は、2016年11月に消費者庁検査法に採用されている。消費者庁 「食品表示基準について」の一部改正について(平成28年11月17日付け消食表第706号)

具体的データ

図1 グループ検査法の概要,図2 リアルタイムPCRアレイ法の分析手順

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)、その他外部資金(受託試験)
  • 研究期間: 2006~2016年度
  • 研究担当者:真野潤一、高畠令王奈、橘田和美
  • 発表論文等:
    1)Mano J. et al. (2009) J. Agric. Food Chem. 57(1):26-37
    2)Mano J. et al. (2011) J. Agric. Food Chem. 59(13):6856-6863
    3)Mano J. et al. (2012) Food Hyg. Saf. Sci. 53(4):166-171
    4)Takabatake R. et al. (2014) Food Hyg. Saf. Sci. 55(5):205-209