小麦ふすまにはオリザノール様成分が米ぬかに匹敵する高い濃度で含まれている
要約
小麦中オリザノール様成分の抽出法及び定量分析法を確立して、小麦穀粒内の濃度分布を調べた結果、小麦ふすまには、米ぬか中のオリザノール濃度に匹敵するほど高い濃度のオリザノール様成分が存在する。
- キーワード:国産小麦、オリザノール様成分、ステリルフェルレイト、ふすま、全粒粉
- 担当:食品研究部門・食品分析研究領域・成分特性解析ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-7991
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
米ぬかに含まれるオリザノールは、ファイトケミカル(植物性化学物質)の一種で、フェルラ酸に各種の植物ステロール又はトリテルペンアルコールがエステル結合した化合物の総称である。ヒトに対する生理機能も詳細に調べられている米ぬかオリザノールは、抗酸化剤として食品及び化粧品に、さらに高脂血症薬、向精神薬、中枢作動薬等の医薬品にも用いられている。この植物ステロール又はトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステル化合物(以後、オリザノール様成分と記載)は、小麦、ライ麦等にも存在すると報告されているが、日本では、ほとんど利用されていない。そこで、本研究では、穀類に含まれるオリザノール様成分の分析法及び抽出法を確立し、国産小麦穀粒での局在性を調べることにより、その有効利用に道筋をつけるとともに、全粒粉等の持続的摂取による国産農産物の高付加価値化を目指している。
成果の内容・特徴
- 小麦のオリザノール様成分は、米ぬかオリザノールの抽出法を改良した方法で単離する。オリザノール様成分は、オリザノール標準品を用いて検量線を作成して、紫外可視検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC)装置で定量する。
- 国産小麦及び輸入小麦の全粒に含まれるオリザノール様成分の量は、9-15 mg/100 gで、玄米粒のオリザノール含量の4割程度である。
- 国産小麦のオリザノール様成分は、カンペステリルフェルレイト、カンペスタニルフェルレイト及びシトスタニルフェルレイトが主成分である。また、HPLCの溶出パターンの比較から、玄米のオリザノールと、小麦のオリザノール様成分とは、分子種組成が異なる(図1)。
- 様々な国産小麦のオリザノール様成分の品種間差を比較すると、その含有量及び分子種組成には、大きな品種間差異は認められない(図2)。
- 試験用製粉機で、国産小麦粒を14分画に分け、オリザノール様成分の各分画の分布を調べると、この成分は、ふすま由来の4分画に局在する(図3)。ふすま4分画のうち特に2分画のオリザノール様成分濃度は、90-100 mg/100 g分画であり、米ぬかのオリザノール濃度(60-240 mg/100 g分画)に匹敵するほど高い(図3)。
成果の活用面・留意点
- 副産物として廃棄されている小麦ふすまは、米ぬか同様に、オリザノール様成分の供給源となり得る。
- 国産玄麦は、全粒粉パン等に利用されることが多いが、全粒粉パン等を継続的に食べることで、オリザノール様成分の持続的摂取が可能になる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2015~2016年度
- 研究担当者:都築和香子
- 発表論文等:Tsuzuki W. et al. (2017) Biosci. Biotechnol. Biochem. 81(3):573-580