電気的処理による食品の品質及び保存性向上のための加工技術の開発

要約

キュウリ等の生野菜を含むポテトサラダを袋詰めしたものに、水中で短波帯交流電界を印加し、ポテトサラダの迅速・均一加熱殺菌を実現する。その際に、ポテトサラダ中のキュウリの熱変性が抑制される。

  • キーワード:ポテトサラダ、殺菌、短波帯加熱、キュウリ
  • 担当:食品研究部門・食品加工流通研究領域・先端食品加工技術ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7991
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2017年にポテトサラダが感染源の一つと考えられる病原性大腸菌O157の食中毒事故が発生している。ポテトサラダにはキュウリ等の生野菜を和える際に大腸菌等の微生物が混入すると、その後加熱処理を行わないため、混入した大腸菌等が増殖する可能性がある。そこで本研究では、ポテトサラダにキュウリと大腸菌を和えてプラスチックバックに密封したものを水中で短波帯加熱(RF加熱)することにより、生野菜の食感を維持したまま大腸菌を殺菌することで、ポテトサラダの安全性向上を目指すものである。

成果の内容・特徴

  • 27MHzの周波数の短波帯加熱(RF)は、プラスチック包装した固体食品を迅速に加熱する。また、マイクロ波の電子レンジ加熱に比べて、低温となる部分が無く、食品を均一に加熱殺菌できる特徴を持っている。
  • キュウリ等の生野菜を和えたポテトサラダ150gをプラスチックバックに詰め、図1に示すようなRF加熱装置で加熱処理する。
  • ポテトサラダと平行平板電極間に充填した水は、ポテトサラダと同時に短波帯加熱されるが、水の昇温速度はポテトサラダよりも遅いため、ポンプで外部の恒温槽に接続した熱交換器を循環することによりポテトサラダと同時に所定の温度に到達する(図2)。
  • 平行平板電極に3kW、27MHzの短波帯交流を90秒印加すると、ポテトサラダの中心温度は温水と同じ温度の80°Cまで上昇する(図2)。直ちに、ポテトサラダを短波帯加熱装置から取り出し、氷水に浸して冷却する。
  • 90秒のRF加熱で80°Cまで加熱した場合、ポテトサラダに添加した大腸菌は図3に示すとおり6対数(1/1,000,000)に減少する。
  • 90秒で80°Cに昇温したRF加熱と同程度の殺菌効果を有する温浴加熱(WB65°C、30分間)で、ポテトサラダに和えた輪切りキュウリ2mm厚の破断強度を測定したところ、RF加熱したものは生に近い硬度を維持しているが、温浴加熱したものは大きく軟化している(図4)。

成果の活用面・留意点

  • ポテトサラダに生野菜を和えた後でRF加熱殺菌しても生野菜の生の食感を維持することが可能なため、ポテトサラダの安全性が向上する。
  • RF加熱はポテトサラダ以外にも、プラスチック包装した様々な加工食品の加熱殺菌に応用することが可能である。

具体的データ

図1 RF加熱;図2 RF加熱の温度履歴;図3 RF加熱時間が残存大腸菌に与える影響;図4 ポテトサラダ中のキュウリの破断強度

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)、その他外部資金(27補正「先導プロ」、資金提供型共同研究)
  • 研究期間:2017年度
  • 研究担当者:植村邦彦
  • 発表論文等:
  • 1)植村ら(2015)日食科工誌、62(11):541-546
    2)植村(2018)農研機構報食品部門、2:15-19