地域特産果実の高圧加工コンポート

要約

果実は、長期保存のために熱加工を施すと、新鮮な味・食感が失われることが多い。本技術では、脱気中高圧処理による効率的液体含浸と、中温処理による熱殺菌とにより、生食感を活かした長期冷蔵保存可能なコンポートが製造できる。

  • キーワード:地域特産果実、コンポート、液体含浸、脱気中温中高圧処理、長期冷蔵保存
  • 担当:食品研究部門・食品加工流通研究領域・食品素材開発ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7991
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

食品高圧加工技術では、高品質な食品が製造できる。従来の高圧加工装置では困難な中温処理(例:65 ℃)が容易な中高圧加工装置を用い、脱気包装後に100 MPa程度の中高圧処理を施すことで、従来にない果実コンポートの製造が可能であることを見出した。
本研究では、地域特産果実を脱気中温中高圧処理することで、中温殺菌しつつ食感を生果実に近づけた果実コンポートを試作し、その品質及び安全性について評価する。

成果の内容・特徴

  • 中高圧処理(100 MPa)と中温処理(65 ℃)とによる効率的な中温中高圧殺菌により、リンゴ、アンズ、ウメ、カキ、サクランボ、西洋ナシ、日本ナシ、モモ、パイナップル等を用いて、4 ℃で1年以上保存可能な果実コンポートが製造できる(図1)。
  • 脱気包装後に中高圧処理することで、果実には調味液が更に効率的に染み込む。
  • 調味液に乳酸カルシウムを添加して脱気中高圧加工することで、果実の硬度を高め、従来の熱加工品にはない生果実に近い食感が実現する。
  • 酸性(pH 4.0以下)の調味液で加工して冷蔵保存することで、芽胞発芽及び微生物増殖を抑えつつ、化学反応及び酵素反応が抑制されるので、安全性を確保しつつ、褐変等の品質劣化が抑えられる。
  • 中高圧処理のみでは、安全性が担保できない(図2)。また、中温処理のみでは、安全性が高まるが生食感が損なわれる。脱気包装後に中温処理と中高圧処理とを組み合わせて加工することで、生果に近い食感を有し、安全性の高い果実コンポートが製造できる(図2、3)。

成果の活用面・留意点

  • pHが低い調味液を使用すると、発芽が誘導されず芽胞は静菌できる。中温殺菌後の安全性を一層高めるには、次亜塩素酸、過酢酸等で果実を洗浄して付着菌数を下げ、不可食部を除去し、調理加工器具を十分に消毒する等の配慮が必要である。
  • 余熱による過剰な加熱を防ぎ、失活せず残存した酵素の働きを抑制するため、脱気中温中高圧処理後の果実コンポートは、可能な限り早く冷却する。
  • 高圧加工コンポートに適さない果実もある。例えば、イチゴは、本加工法では、色素が調味液に溶出したり、内部に浸透したりして、表面の色が薄くなる問題がある。

具体的データ

図1 各種高圧果実コンポート;図2 各種処理条件で作製したパイナップルコンポートの一般生菌数;図3 各種処理条件で作製したパイナップルコンポートの硬度

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)、その他外部資金(国連大学)
  • 研究期間:2012~2017年度
  • 研究担当者:山本和貴、中浦嘉子、三輪章志(石川県農林総合研究センター)、有手友嗣(石川県農林総合研究センター)、南出恵美(石川県農林総合研究センター)、深井洋一((一社)長野県農村工業研究所)、竹内正彦((一社)長野県農村工業研究所)、山崎慎也(長野県工業技術総合センター)、山田美里(山形県農業総合研究センター)、有村恭平(鹿児島県大隅加工技術研究センター)、水野文敬(岐阜県中山間研究所)、新川猛(岐阜県農業技術センター)、Nazim UDDIN(Bangladesh Agricultural Research Institute)
  • 発表論文等:
  • 1)中浦(2017)食品と容器 「中温中高圧加工した果実コンポート」 pp.460-466 缶詰技術研究会、東京
    2)山本ら「食品に対する脱気・加熱・高圧処理方法」特開2017-79729(2017年5月18日)