ちぢみ雪菜のチップ

要約

宮城県産ちぢみ雪菜をアクアガスによりブランチングし、温度および湿度を調整した環境下で乾燥することにより、従来にない独特かつ良好な食味および食感を持った乾燥野菜の製造が可能である。

  • キーワード:ちぢみ雪菜、アクアガス、露点制御乾燥、チップ
  • 担当:食品研究部門・食品加工流通研究領域・食品製造工学ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7991
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

東日本大震災により被災した食料生産地域の再生に資するべく、宮城県産農産物の用途・需要拡大を目指し、農産物一次加工品の高品質化と新規加工品製造の実証試験を実施した。宮城県産農産物20種類以上について、微細水滴を含有した過熱水蒸気であるアクアガス等を利用して、ブランチング品、ペースト、乾燥品、粉末等の加工品を試作し、宮城県内の食品製造業者、外食事業者および食品流通業者による評価を受けた。試作品の中でも特に、ちぢみ雪菜の乾燥品(ちぢみ雪菜チップ)が良好な食味・食感を有し、また従来にない外観を有する商品としての価値が期待できるとの評価を受けたことから、ちぢみ雪菜チップの製造条件について検討し、宮城県内食品製造事業者と共同で商品化を目指す。

成果の内容・特徴

  • ちぢみ雪菜チップ製造工程の概略を図1に示す。ちぢみ雪菜を株元でカット後、洗浄し、アクアガスにより30~45秒間ブランチングする。その後、40°Cから60°Cまで12~18時間かけて温度を上昇させながら、温風の湿度を制御しながら乾燥する露点制御乾燥にてちぢみ雪菜の乾燥を行う。また、乾燥前のちぢみ雪菜に塩などで味付けをする。以上の工程により、図2に示すちぢみ雪菜チップを製造することが可能である。
  • 従来、根菜、果菜、果実などの乾燥品が一般的であり、葉菜類の乾燥品は極めてまれであったことから、ちぢみ雪菜チップは新規性があり高い需要が見込まれる。
  • ちぢみ雪菜の葉が極めて肉厚であり、また縮れた葉が独特の形状を持つことから、乾燥品に加工した際に他の葉菜では得られない独特の食感が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 良好な外観、食味および食感を有した状態で保存するためには、ちぢみ雪菜チップの含水率を湿量基準で5.0%以下に保つことが望ましい。保存中に含水率が上昇すると、ちぢみ雪菜チップは黄変を起こすが、光がチップの色彩に及ぼす影響は小さいことから(図3)、包材は販売に有利な透明のものを用いることができるが、水蒸気バリア性の高いものを使用することが望ましい。
  • ちぢみ雪菜チップはそのまま単独で食する用途で開発したが、酒のおつまみ、オードブルの色添え、お造りのあしらい、前菜等の方法で食しても良好な食味・食感を味わうことが可能である。
  • ちぢみ雪菜チップは吸湿すると歯切れが悪くなり、食感が著しく悪化することから、汁物に入れるなどの調理は避けることが望ましい。

具体的データ

図1 ちぢみ雪菜チップの製造工程;図2 ちぢみ雪菜チップ(試作品);図3 保存環境によるチップ色彩変化

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2012~2017年度
  • 研究担当者:五月女格、岡留博司、奥西智哉、安藤泰雅
  • 発表論文等:
  • 1)五月女(2016)農業食料工学会誌、78(3):204-209
    2)五月女ら(2017)日本食品工学会第18回年次大会講演要旨集、p.31
    3)五月女ら「加熱媒体発生装置及び該加熱媒体発生装置を含む加熱処理装置」特許第6244592号(2017年11月24日)