カップ麺製品におけるノシメマダラメイガ混入時期推定のための発育調査

要約

カップ麺製品での本種の発育日数(孵化から成虫まで)は平均37.7日(25°C)であり、生きた幼虫が発見された場合、混入時期推定の目安に利用できる。カップ麺容器内に200個体の孵化幼虫を投入した場合は、明らかな発育遅延が起きる。

  • キーワード:異物混入、カップ麺製品、混入時期推定、発育日数、ノシメマダラメイガ
  • 担当:食品研究部門・食品安全研究領域・食品害虫ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7991
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ノシメマダラメイガは、乾燥食品に混入する頻度が高い食品害虫として問題になっている。カップ麺製品には、油揚げ麺に多様な乾燥食材が組み合わされた製品があり、本種幼虫が容器内に混入すれば、摂食可能な食材が多数存在することになる。複数の食材を幼虫がどのように食べ分けるかや、それらが発育日数に与える影響に関する研究は報告がない。また、カップ麺製品への幼虫の混入時期推定のための発育日数の報告もない。
本種の混入時期推定のための発育日数と複数の食材が幼虫の発育に与える影響を調べるために、カップ麺製品で発育試験を行う。具体的には、市販されているカップ麺製品を用いて、A.油揚げ麺、B.植物性かやく(キャベツ、ネギ、トウモロコシ)、C.動物性かやく(肉片)、D.製品(AからCまで合わせたもの)に分け、食材単独およびその組み合わせについて、羽化率と発育日数を調べる。各試験区は、孵化後24時間以内の幼虫10個体を投入し、温度25°C、相対湿度70%、日長16時間明期、8時間暗期(16L8D)の条件で飼育する。試験の食材量は、カップ麺1個当たりに含まれる具材を分けて使用する。
また、カップ麺製品に本種孵化幼虫10個体または200個体を投入して、31~34日後に冷凍殺虫し、幼虫、蛹、成虫の個体数を計測することで、幼虫密度が本種の混入時期推定に与える影響を調べる(過去に200個体以上の幼虫の混入事例が報告されている)。試験は、温度25°C、相対湿度70%、日長16L8Dで飼育する。

成果の内容・特徴

  • カップ麺製品(キャベツ、ネギ、トウモロコシ、豚ミンチ肉片、油揚げ麺の混合物)での平均発育日数は、37.7日であり、植物性かやく(キャベツ、ネギ、トウモロコシ)、トウモロコシ、油揚げ麺での発育との間に有意差はない。平均発育日数の最短は、植物性かやくと動物性かやく(肉片)の混合物で28.1日、最長は肉片で50.2日となる。これらの結果は、本種幼虫はカップ麺製品を構成する油揚げ麺、植物性かやく、肉片を摂食して発育し成虫になることを示す(図1、表1)。
  • カップ麺製品での本種の混入時期推定では、卵期間は25°Cで5日であることから、試験に用いたカップ麺製品での発育日数は、平均で42.7日(37.7+5日)と考えられる。同じような食材(かやく)の組み合わせからなるカップ麺製品では、混入時期推定の目安になる(表1)。
  • カップ麺1個あたりに本種孵化幼虫200個体を投入する場合、10個体投入した場合と比較して、生存率は半分に低下し、幼虫や蛹の占める割合が高く、明らかに発育が遅延する。幼虫密度の高い混入の場合は、その混入時期推定に発育遅延を考慮する必要がある(表2)。

成果の活用面・留意点

  • カップ麺製品全体とその構成食材単独では、本種幼虫の発育日数は異なるため、一部の食材で判断するのではなく、製品全体を対象にした発育試験が必要である。
  • カップ麺製品の具材や味付けが異なれば、本種幼虫の発育日数は異なる。
  • 本種の発育遅延には、摂食対象(食品)や容器の大きさ等が影響すると考えられ、密度の影響については更に試験が必要である。

具体的データ

図1 カップ麺製品とその構成食材;表1 カップ麺製品とその構成食材の組み合わせでのノシメマダラメイガの発育日数と羽化率;表2 カップ麺製品1個あたり10および200個体の孵化幼虫を投入した場合の生存個体に占める各発育ステージの割合と生存率

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:宮ノ下明大
  • 発表論文等:
  • 1)宮ノ下ら(2017)ペストロジー、32(1):7-9
    2)宮ノ下ら(2017)都市有害生物管理、7(1):11-14