酒米白糠を用いた糖化物製造

要約

酒米搗精時に発生する白糠から加熱糊化処理なしに糖化物を製造する方法である。この糖化物は甘味料や製パン改良剤として利用できる。

  • キーワード:酒米、白糠、低温、糖化、製パン改良
  • 担当:食品研究部門・食品加工流通研究領域・食品製造工学ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8015
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

酒造において酒質を高めるために酒米はその外層の多くを研削される。一般の米飯用途向きでは玄米重量に対し外層10%を占めるアリューロン層(いわゆる糠分)を除去し90%精米歩合として販売・消費されるが、90%精米(精白米、白米とも称される)の外層部にはタンパク質が比較的多く含まれる。このタンパク質は酒造時において"雑味"の原因となるためさらに研削され、より中心部のデンプン割合が高い部分のみが取り出される。その結果、酒造用精米では少なくとも70%精米、時には50%を下回る精米が行われる。このとき発生する米粉は白糠(しろぬか)と呼ばれるが、効果的な活用があまりされていない。北海道新十津川町では北海道産酒米のおよそ半分が生産されているが、白糠は有効利用されてこなかった。そこで本研究では、この酒米白糠の有効活用を図ることにより、低コストの地元特産品開発あるいは付加価値を高めた食品の製造等の6次産業化につなげることで地域活性化に寄与する。

成果の内容・特徴

  • 酒米白糠の表面構造が通常の米粉とは大きく異なっている(図1)ことから、常温・低温においても発酵による糖化が効率的(図2、約10%の糖変換率)に進む。これを例えばBrix60程度に煮詰めることにより天然由来の甘味料として提供される。
  • 酒米白糠に米麹と水を混ぜることで甘味料の原材料になる。通常の米粉では必要になる加熱(約60℃)による糊化処理が不要である。よって簡単にかつ低コストで糖化物を生産できる。
  • 糖化物は製パン改良剤としても有効である。小麦粉1kgに対して糖化物を10gあるいは50g添加した時、添加量に応じてパンが膨らんだ(図3、比容積はパンの膨らみを表す指標)。また、焼成したパンは保存とともに硬くなるが、糖化物を添加したものは焼成3日後でもパンは柔らかいままである(図4)。
  • 酒米白糠は酒米搗精時に発生する。生産地を含む農村あるいは地方都市で多く搗精されることから地域の特産品開発のための原料としても利用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:酒米搗精業者、酒造事業者、食品(製菓・製パン)加工事業者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  • その他:発生場所は酒米搗精事業者に集中することから原料集荷が不要になり、白糠発生のほぼ全量に対してこの成果が活用可能である。全国では酒米生産量10万t/年の概ね30%量の白糠発生が予想される。

具体的データ

図1 酒米白糠(左)および米粉(右)の電子顕微鏡写真,図2 常温(20℃)での糖化挙動,図3 パン比容積改良効果,図4 パン品質劣化抑制効果

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(資金提供型共同研究)
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:奥西智哉、後木満男(北海道新十津川町)、平川宏之(北海道新十津川町)
  • 発表論文等:奥西ら、特願(2018年3月26日)