ナタデココ生産における酢酸菌のコロニー形態と生産能には明らかな相関性がある
要約
ナタデココ生産における酢酸菌のCE寒天培地上のコロニー形態と生産能の間には相関性がある。また、CE液体培地では高生産株は培地表面上に菌膜を形成するのに対して、低生産株は培地底部に沈降する。これらの特徴により、ナタデココの高生産株を容易に選抜することができる。
- キーワード:ナタデココ、微生物セルロース、酢酸菌、コロニー形態、菌膜形成
- 担当:食品研究部門・食品生物機能開発研究領域・微生物機能ユニット
- 代表連絡先:029-838-8013
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
フィリピン発祥の伝統発酵食品である「ナタデココ」は、セルロース生産能を有する酢酸菌(Gluconacetobacter xylinus)がココナッツミルクの表面上に形成する微生物セルロースであり、低カロリーの食物繊維としてダイエット食や特定保健用食品に利用されている。しかしながら、菌膜形成不良などが原因となり不均一なナタデココが生成されるなど、生産歩留まりの低下が度々発生するため、ナタデココの安定的生産が重要な課題となっている。そこで本研究は、ナタデココの生産菌の特徴とセルロース生産能の関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 無作為に選抜したナタデココ生産用種菌を、ココナッツエキスを主成分とするCE寒天培地(ココナッツエキス50%、グルコース6%、酢酸でpH4.0に調整)で継代培養すると、その生産能は頻繁に変化する(図1)。また、コロニー形態にも変化が見られ、ナタデココ生産能とコロニー形態の間には明らかな相関性がある(図2AおよびB)。
- 光沢のないRough型コロニーは、良好なナタデココ生産を示す(図2AおよびB)。
- 光沢のあるSmooth型コロニーは、ナタデココ生産能が低下している(図2AおよびB)。
- 中間的な形態を示すR/S型コロニーは、Rough型とSmooth型が混在している状態であると考えられ、それらの比率によりナタデココの生産能は大きく異なる(図2AおよびB)。
- 良好なナタデココ生産を示すRough型は液体培地表面に菌膜を形成するのに対して、ナタデココ生産能が低下したSmooth型は培地底部に沈降する傾向がある。
成果の活用面・留意点
- CE寒天培地上でコロニー形態を目視により確認することによって、ナタデココの高生産株を容易に選抜することができる。
- 寒天培地上でのコロニー形態は培地に大きく依存するため、他の培地ではコロニー形態が変化することも考えられるので注意が必要である。
- 良好なナタデココ生産を示す株はCE液体培地の表面に菌膜を形成するのに対して、生産性が低下した株は培地底部に沈降する傾向があるため、連続培養の際には培地底部の菌体を取り除くことにより、ナタデココの生産性を安定化できる可能性がある。
- ナタデココ生産を低下させる原因変異は未同定であるが、生産能が低下した株の特徴から菌膜形成に関与する遺伝子内の変異である可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2016~2017年度
- 研究担当者:稲岡隆史、木村啓太郎、中村敏英、冨田理
- 発表論文等:稲岡ら(2018)農研機構研究報告 食品研究部門、2:21-25