長期冷蔵保存可能な唐揚用高圧加工メヒカリ素材

要約

冷蔵流通約2日間で傷み始めるメヒカリの頭部・内臓を除去して洗浄後、南蛮酢と共に脱気包装し、高圧加工(600MPa,10°C,5分)することで、約3ヶ月間の冷蔵後でも良好な唐揚に調理できる。冷凍解凍操作が不要なので、外食産業厨房での調理時間が短縮される。

  • キーワード:メヒカリ、低温高圧処理、長期冷蔵保存、加工素材、唐揚
  • 担当:食品研究部門・食品加工流通研究領域・食品素材開発ユニット
  • 代表連絡先:029-838-8015
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

メヒカリは、肉質が白身で脂が乗っており、骨も柔らかく、味の良い魚であるが、その保存性は悪く、冷蔵下でも約2日間で傷み始めてしまう。そのため、市場流通させるためには、干物または冷凍品として出荷する必要がある。しかし、干物は独特な加工品であり、一方、冷凍品は、販売もしくは調理前に解凍する必要があることから、時間のロス、旨味・栄養がドリップとして流出すること等が懸念される。そこで、本研究では、最小加工により、メヒカリの高圧加工品を試作し、加工素材としての長期冷蔵流通の可能性を検討する。

成果の内容・特徴

  • メヒカリを、pHの低い調味液(例:南蛮酢)と共に低温高圧処理することで、外観を大きく損なうことなく(図1)、約3ヶ月間の冷蔵保存が可能となる(図2)。
  • 中温中高圧処理(100MPa,65°C,30分)すると大きく身が崩れるが、低温高圧処理(600MPa,10°C,5分)すると、良好な形状を維持することが出来る(図1)。よって、適切な高圧処理条件を選択することが重要である。
  • 冷蔵保存中の微生物増殖は、食塩水を調味液に用いると抑制できないが、pHが低い南蛮酢を調味液とすると抑制できる(図2)。つまり、低pHの調味液を用いることが鍵である。
  • メヒカリ加工時に、頭部及び内臓を除去して自己消化酵素をできる限り取り除き、更に低pHの調味液を用いて酵素活性を抑制することで、保存時、唐揚時の身崩れが抑制される(図3)。
  • 調味液の調合により、味付けを変化させることも可能である。

成果の活用面・留意点

  • 高圧処理後は、菌数増加及び自己消化を抑制するため、直ちに冷蔵保存することが重要である。
  • 今後は、百貨店、料亭などでの販売を想定している。メヒカリのように単価が比較的高く、長期保存の需要が高い魚種があれば、本技術は実用的に利用可能と考える。

具体的データ

図1 高圧加工後のメヒカリ外観,図2 食塩水(pH9.75)及び南蛮酢(pH3.86)を調味液として高圧加工したメヒカリの微生物検査,図3 低温高圧加工メヒカリを冷蔵保存後に調理した唐揚

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2017~2018年度
  • 研究担当者:中浦嘉子、山本和貴
  • 発表論文等:Nakaura Y. and Yamamoto K. (2018) Food Sci. Technol. Res. 24(3):413-420