乾式微粉砕で損傷澱粉を高めて、フライ用米粉バッターの粘度を自在に制御
要約
乾式で微粉砕した微細米粉(平均粒径:10μm前後、損傷澱粉:25%以上)はバッターの濃度上昇に伴う粘度増加が著しく、粗い米粉(100μm以上)よりもバッター粘度を幅広く制御できる。本技術により、バッター粘度の高いフライ用米粉の開発が可能になる。
- キーワード:米粉、微粉砕、損傷澱粉、バッター粘度、フライ
- 担当:食品研究部門・食品加工流通研究領域・食品製造工学ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-8015
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
米粉の需要拡大に向けて米粉パンについては多くの知見が公表されているが、フライ用途の米粉の加工特性に関する知見は少ない。そこで、本研究ではフライ用途に適した米粉の特性解明を目的とし、米粉の粒径差による粉体特性やバッター粘度の相違を解析し、フライ用途に適した米粉の製造方法や特徴を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 米粉製造工場の荷受け段階での原料の水分変動を想定し、ジェットミル(微粉砕用粉砕機の一種。高速気流で原料を衝突粉砕)では初期水分が異なる3種類の白米を乾式で微粉砕を行う。ジェットミル米粉は平均粒径が最も小さく、損傷澱粉含量が最も高い。原料の初期水分の影響については、水分が11~16%の間で変動しても平均粒径が10μm前後で、かつ損傷澱粉25%以上の微細米粉を作製できる。またジェットミル米粉は平均粒径が小さく、カサ密度が大きいので、他の米粉とは製粉工程でのハンドリング特性が異なる(表1)。
- フライ用途で具材にバッターを付着させるにはバッターへの粘度付与が必要なため、粒径差による米粉バッターの粘度相違を検討する。20%濃度では試料間の粘度差があまり見られないが、30%濃度ではジェットミル米粉は他の試料の3倍以上の粘度を示す。すなわち、ジェットミル米粉では20~30%濃度での粘度増加が著しく、粒径の粗い米粉よりもバッター粘度を幅広く制御できることが示唆される。またジェットミル米粉では初期水分差による粘度相違が若干見られる(図1)。
成果の活用面・留意点
- 乾式での微粉砕のため湿式微粉砕に比べて製粉コストの低減が期待できる。
- 高粘度タイプの微細米粉を用いることにより、バッター粘度を幅広く制御できる。
- 粗い米粉よりも低濃度でバッター粘度を増強できるため、使用量の削減が期待できる。
- 粒径が細かくカサ密度が小さいため、微細米粉に適した製粉工程(ホッパー、搬送、充填、包装等)の設計や粉塵対策等が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
- 研究期間:2013~2018年度
- 研究担当者:岡留博司、五月女格、奥西智哉、安藤泰雅、中山久之(長崎県農林技術開発センター)
- 発表論文等:
- 岡留(2017)食糧-その科学と技術-、55:5-17
- Hossen MS. et al. (2016) Cereal Chem. 93(1):53-57