米以外の各種穀物由来オリザノールの組成と抗酸化能

要約

小麦、とうもろこし、粟は、それぞれ異なった組成のオリザノール成分を含有し、それらは米オリザノールよりも疎水性の高い成分を多く含有する。これらのオリザノールは米オリザノールと同等の抗酸化能を有する。

  • キーワード:小麦、とうもろこし、粟、オリザノール、抗酸化能
  • 担当:食品研究部門・食品分析研究領域・成分特性解析ユニット
  • 代表連絡先:029-838-8012
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

オリザノールは、抗酸化能等の機能性を有する植物性化学物質のひとつであるが、単一構造ではなく「植物ステロールまたはトリテルペンアルコールにフェルラ酸がエステル結合した成分」と定義される成分の集合体である。それらの共通構造であるフェルラ酸部分がオリザノールの生理機能性に関与している。米ぬかから抽出される米オリザノールは、主として4種類の成分から構成されており、抗酸化剤および中枢神経作動薬として食品、化粧品分野および医薬品分野で広く活用されている。オリザノールは、小麦、とうもろこし、粟にも含まれているが、産業的な利用はほとんどない。そこで、米以外のこれら穀類のオリザノールの含量や成分組成を調べ、その抗酸化能を米オリザノールと比較することにより、米以外の穀類オリザノールの有効利用に道筋をつける。

成果の内容・特徴

  • 玄米、小麦全粒、とうもろこしおよび玄粟から、定法に従ってオリザノールを抽出し、紫外可視検出器付高速液体クロマトグラフ(UV-HPLC)装置で分析する(図1)。各穀類のオリザノール含量は、シクロアルテニルフェルレイト標準品の検量線を作成して、HPLCのピーク面積の和から算出する(表1)。
  • 小麦、とうもろこし、粟のオリザノールは、HPLCの溶出時間が遅い疎水性の強いオリザノール成分の割合が、米オリザノールよりも多い(図1)。
  • 小麦オリザノールは、βシトステリルフェルレイト、カンペステリルフェルレイトおよびスティグマスタニルフェルレイトが主成分であり、とうもろこしや粟のオリザノールはスティグマスタニルフェルレイトが主成分である。米オリザノールの主要成分は4種類であるが、微量成分まであわせると24種類以上の成分から構成されている。その微量成分の中には、小麦、とうもろこし、粟の主要成分になる成分も含まれている(図1)。
  • 玄米、小麦全粒、とうもろこしおよび玄粟から、溶媒で粗オリザノールを抽出し、固相カートリッジカラムでオリザノール成分を分画する(図2)。この精製オリザノールをHPLCで定量し、各穀類のオリザノールとして抗酸化能を測定する。小麦、とうもろこし、粟のオリザノールは、米オリザノールと同様にαトコフェロールより強い銅イオン還元力がある(図3)。この他、2,2-ジヒドロフェニル2-ピクリルヒドラジル(DPPH)に対するラジカル捕捉能に関しても米オリザノールと同様の抗酸化能があり、抗酸化剤としての利用が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 穀類のオリザノールは顆粒内で局在化しているため、オリザノール含量の多い部位を見つけることが効率的な利用に繋がる。
  • 穀類のオリザノールは、貯蔵性が優れているため、オリザノールを含む穀類を継続的に食べることでもオリザノールの持続的摂取ができる。

具体的データ

図1 各穀類のオリザノールのHPLCクロマトグラム,表1 穀類のオリザノール含量の例,図2 各穀類オリザノールの固相カートリッジカラムによる精製,図3 各抗酸化剤の銅イオン還元力

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2015~2018年度
  • 研究担当者:都築和香子
  • 発表論文等:Tsuzuki W. et al. (2018) J. Cereal Sci. 15:120-125