LAMP法による簡易迅速、低コストな遺伝子組換え検査法

要約

本検査法は、Loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法に核酸クロマトグラフィー技術を適用することによって、従来の遺伝子検査に用いられてきた高額な分析装置を不要とする、簡易迅速且つ低コストな検出技術である。

  • キーワード:遺伝子組換え、検知、LAMP法、核酸クロマト、簡易迅速
  • 担当:食品研究部門・食品分析研究領域・信頼性評価ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8014
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

遺伝子組換え(GM)作物の種類は年々増え続けており、その全てを系統毎に逐一検知することは実質的に困難になってきている。現在広く実施されているPCR検査は非常に有効ではあるものの、高価な機器を必要とし、検査結果が得られるまでに数時間かかるということも指摘されている。従来のGM作物検査では、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター(P35S)のような、多くのGM作物に共通に導入されている配列を標的とした効率的なスクリーニング手法が導入されているが、P35Sを持たないGM作物も急激に増えてきている。現状では、このようなGM作物に関しては、新たに系統特異的な検査法を開発し、現行法に追加することで対応せざるを得ないが、検査法追加にかかる時間やコストはそのまま蓄積していくことから、今後検査法を見直す必要があると思われる。このような背景から、GM作物検査の簡易迅速化あるいは効率化が強く求められている。核酸クロマトグラフィー(核酸クロマト)は遺伝子検査法の一種で、標的核酸の有無を目視で判定可能な技術であり、Polymerase Chain Reaction(PCR)法の結果判定では多くの分野で利用されている。本研究では、Loop-mediated Isothermal Amplification(LAMP)法を基盤技術とし、さらに増幅核酸の検出に核酸クロマト技術を導入することによって、検査の簡易迅速、低コスト化を試みる。

成果の内容・特徴

  • 核酸クロマトによるLAMP増幅産物検出を示す模式図を図1に示す。LAMP法に用いる6種類のプライマー(F3、B3、FIP、BIP、LoopF、LoopB)のうち、FIPあるいはLoopFをタグ配列で、LoopBをビオチン分子で標識。メンブレン上に固相化された相補タグDNAの位置でLAMP増幅産物をトラップし、発色することによって標的DNAの有無を目視判別可能である(図1)。
  • 従来の検査法では、試料からDNAを抽出後に精製する必要がある。一般的には、DNAの抽出・精製に1時間以上、PCR反応に2時間以上を要する。本手法では、DNAの精製が不要で、市販の簡易抽出キットを用いても検出が可能である。実施例として該当キット(ファスマック社GenCheck(R) DNA Extraction Reagent)を用いた場合には、前処理が20分未満で終了することから、検出までの全行程が1時間以内で完了する(図2)。標的組換えDNAを含む試料からは、試験紙上にLAMP増幅を示す青い線が検出される。
  • GMトウモロコシ及びダイズの多検体同時検出結果。3セットのLAMP用プライマー(18種類のプライマー)を混合することにより、3種類の標的を同時に検出可能である。また、検出下限に関しては、0.5%以下の混入まで検出可能である(図3)。タグ配列は複数種類(F1、F2、F3等)利用可能となっており、タグの種類によって青い線の出る位置が異なっている。また、3本のピンクの線は位置マーカーを示しており、これらの線を目印に増幅産物の識別が可能である。非組換えトウモロコシ及びダイズの試験紙上端に見られる青い線は、LAMP未反応のフリープライマー由来のものと考えられる。
  • 従来の検査法の多くは、PCRを利用することから、細かい温度制御をするための高額な装置が必要となっている。一方、本手法は等温反応であり、且つ目視で判定が可能であることから、高額な分析装置を必要としない。

成果の活用面・留意点

  • 簡易迅速かつ低コストである本手法を、GM作物検査の定性スクリーニング法として活用されるよう、共同研究機関及び関連規制省庁に提案する。
  • LAMP法は大量の増幅産物を生成する技術であることから、本検査法を利用する際には、コンタミネーションの防止に留意する。とくに、LAMP反応後、チューブのふたを開く工程を含んでおり、内容液が飛び散らないように慎重に作業する必要がある。

具体的データ

図1 核酸クロマトによるLAMP増幅産物の検出,図2 粗抽出液を用いた検出の概略図,図3 多検体同時検出結果

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)
  • 研究期間:2012~2018年度
  • 研究担当者:高畠令王奈、真野潤一、橘田和美
  • 発表論文等:
    • Takabatake R. et al. (2018) J. Agric. Food Chem. 66(29):7839-7845
    • Takabatake R. et al. (2018) Food Chem. 252:390-396