国内主要農産物の放射性Cs低減対策技術に関する研究成果を国内外へ発信

要約

国内主要農産物の栽培・収穫・加工調理を通じたフードチェーンアプローチによる放射性Cs低減技術に関するパンフレットを作成し、国内外の消費者に対して情報発信することにより、農産物や食品に対する不安軽減、住民の帰還促進、および被災地域での営農再開促進に貢献する。

  • キーワード:放射性Cs、低減対策技術、フードチェーンアプローチ、国内主要農産物、営農促進
  • 担当:食品研究部門・食品安全研究領域・食品安全性解析ユニット
  • 代表連絡先:電話 024-593-1310
  • 分類:過年度普及成果情報(2011、2013、2015、2017)

背景・ねらい

東京電力福島第一原子力発電所事故以降、国内では食品中の放射性セシウム(Cs)濃度の検査を実施し、食品衛生法で規定された基準値(100Bq/kg)以下の農産物や食品のみが流通している。事故直後から継続して農産物や食品の安全性は十分に担保されているものの、被災地域産農産物に対して不安を抱く消費者が国内外に存在することも事実である。本研究では、国内主要農産物である米、大豆、そばにおいて、栽培・収穫・加工調理の各段階における放射性Cs低減技術を盛り込んだパンフレットを作成し、これらを用いた情報発信により、フードチェーンアプローチによる放射能低減技術を国内の消費者に伝え、農産物に対する不安を軽減し、被災地域産農産物に対する信頼性の向上、避難住民の帰還促進、被災地域での営農再開促進に貢献する。また、英語版を作成することにより、被災地産農産物の輸出再開に対する貢献、インバウンド推進も見込まれる。

成果の内容・特徴

  • 米のパンフレットでは、土壌中の交換性カリ含量の管理による玄米の放射性Cs濃度抑制効果、収穫後の籾摺り機による汚染防止対策技術、精米および炊飯による放射性Csの低減効果を掲載している(図1)。
  • 大豆のパンフレットでは、土壌中の交換性カリ含量の管理による大豆子実の放射性Cs濃度抑制効果、豆腐加工や納豆加工、煮豆調理による放射性Csの低減効果を掲載している(図1)。
  • そばのパンフレットでは、土壌中の交換性カリ含量の管理による玄そばの放射性Cs濃度抑制効果、収穫後のそば磨きによる放射性Cs濃度低減効果、さらに製粉やそば茹で調理による放射性Csの低減効果を掲載している(図1、図2)。
  • パンフレットは、過年度研究成果8件(主要普及成果6件、研究成果情報2件)の内容を、国内主要農産品別に栽培から加工調理までのフードチェーンを通じた放射性Cs低減技術として示すとともに、消費者を対象としたより理解しやすく簡潔な内容となっている。

普及のための参考情報

  • 普及対象:消費者、流通・加工業者、復興に取り組む関係省庁および自治体
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:福島県を中心とした東北地方
  • その他:
    • パンフレット作成(そば:2018年2月、小麦:2019年12月、大豆:2019年12月)以来2019年12月末までの間に、アグリビジネス創出フェア、食と農の科学館常設展示、国内外学会・研究会、消費者に向けた勉強会等において1200部を配布している。
    • パンフレットは、農研機構HP(http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/nfri/contens/nfriwg/riwg/index.html)にて電子データとして入手が可能である。
    • パンフレットに掲載している研究成果は8件の成果情報からより詳細な内容を取得することが可能である。
      • 主要普及成果(2011)「水田土壌のカリウム供給力の向上による玄米の放射性セシウム濃度の低減」
      • 主要普及成果(2013)「籾摺機での玄米の放射性物質による汚染を防ぐ機内残留物除去方法「とも洗い」」
      • 主要普及成果(2013)「カリ施用による大豆子実の放射性セシウム濃度の低減」
      • 主要普及成果(2014)「カリ施用による玄そばの放射性セシウム濃度の低減」
      • 主要普及成果(2015)「倒伏による玄そばへの放射性セシウムの混入と収穫後の調製による低減対策」
      • 主要普及成果(2015)「玄米はとう精と炊飯調理によって放射性セシウム濃度が低減」
      • 研究成果情報(2013)「放射性セシウムの大豆の加工・調理における加工係数」
      • 研究成果情報(2017)「そばの製粉とそば麺の茹で調理による放射性セシウムの低減」

具体的データ

図1 放射性セシウム低減技術を盛り込んだパンフレットの表紙,図2 そばパンフレット

その他