野沢菜漬より見出した脂肪蓄積を抑制する乳酸菌株

要約

野沢菜漬より新規のLactobacillus plantarum Shinshu N-07株 (N-07) を分離した。本菌株を高脂肪食に添加してマウスに摂取させたところ、高脂肪食により誘導される内臓脂肪の蓄積を抑制する。N-07はゲノム配列に基づき設計したPCRプライマーにより特異的に検出できた。

  • キーワード:Shinshu N-07株、乳酸菌、野沢菜漬、内臓脂肪蓄積抑制、菌株特異的PCR
  • 担当:食品研究部門・食品健康機能研究領域・栄養健康機能ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8011
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

野沢菜漬は乳酸菌による発酵食品であり、長野県地方で主に生産・消費される地域特産物である。乳酸菌には肥満抑制をはじめとする種々の機能性が報告されているが、その機能性は菌株特異的である。本研究では、野沢菜の発酵に関与する乳酸菌種を明らかにし、高脂肪食により誘導される内臓脂肪の過剰蓄積抑制機能を有する乳酸菌株を取得するとともに、当該菌株の特異的検出系を構築することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 実験室で野沢菜漬けを作製し、発酵に関与する乳酸菌を解析した結果、L. curvatusおよびL. plantarumが主に発酵に寄与すると考えられる(図1)。
  • 上記野沢菜漬から分離したN-07は、高脂肪食により誘導される内臓脂肪(副睾丸脂肪組織)、肝臓の脂肪蓄積を抑制する(図2)。これらの作用は野沢菜漬より分離したL. curvatus LcA株にはみられなかったことより、菌株特異的であると考えられる。
  • N-07は、ゲノム情報に基づき設計したPCRプライマーにより特異的に検出される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • N-07の体脂肪蓄積抑制作用に関するヒト介入試験を計画しており、ヒトでの有効性が評価されれば、機能性表示食品開発に活用できる。

具体的データ

図1 L. curvatusおよびL. plantarumの野沢菜発酵過程での菌数の推移,図2 N-07の高脂肪食により誘導される内臓脂肪(精巣上体周囲脂肪組織)、肝臓脂肪蓄積抑制作用,図3 菌株特異的プライマーを用いたPCRによるN-07の特異的検出

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(地域特産物発掘)、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2016~2019年度
  • 研究担当者:
    渡辺純、河合崇行、冨田理、Bayanjargal Sandagdorj(筑波大学)、田中沙智(信州大学)、河原岳志(信州大学)
  • 発表論文等:
    • 渡辺ら、特願(2019年3月26日)
    • Sandagdroj B. et al. (2019) Microbes and Environments. 34:206-214