リコピン高含有トマトの継続摂取は食後血糖値の急激な上昇を抑制する

要約

リコピン高含有トマトを継続摂取したラットでは、糖負荷試験における血糖値の急激な上昇が抑えられる。その作用機序は、血中レプチン濃度の増加による糖代謝改善であると想定される。

  • キーワード:リコピン(リコペン)、トマト、レプチン、血糖値、ラット
  • 担当:食品研究部門・食品健康機能研究領域・機能成分解析ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8011
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

我が国の糖尿病とその予備軍は2000万人を超えると言われているが、このような生活習慣病に対しては、食習慣等の改善を通じた予防が期待されている。カロテノイドには、糖尿病の前段階から見られる糖代謝異常に対して抑制的に作用するという報告がある。また、糖代謝には、インスリンのように直接血糖値の低下に関与するホルモンだけではなく、レプチンやアディポネクチンなどのホルモンがインスリン作用の増強を介して、糖代謝改善に関与するという報告もある。そこで、カロテノイドの一種であるリコピンを豊富に含むトマト(高リコピントマト)の継続摂取が糖代謝およびこれらのホルモンに与える影響並びにその作用機序について健常ラットを用いて明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 高リコピントマト、および対照としてリコピンを含まないトマト(表1)を、ホモジナイズ後殺菌し、健常ラットに1日あたり1mL(約4 g/kg体重)、4週間経口投与する。
  • 4週目に一晩絶食させた後に、糖負荷試験としてブドウ糖溶液を経口投与し、投与後120分までの血糖値を測定すると、血糖値が上昇する15分から30分にかけて、高リコピントマト投与群において有意に血糖値の上昇が抑えられる(図1a)が、血糖値低下作用を持つインスリンの血中濃度に有意な差は見られない(図1b)。
  • トマト投与試験終了時点で、糖代謝改善に寄与するという報告があるレプチンやアディポネクチンの血中濃度を測定したところ、高リコピントマト摂取群において、レプチンにのみ有意な上昇が確認され(図2a)、アディポネクチンに差は認められなかったことから(図2b)、高リコピントマトの継続摂取は、血中レプチン濃度の増加させることにより、血糖値上昇を抑制すると想定される。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で用いた高リコピントマトは、株式会社サラダボウルより「ごちそうトマト」という名称で販売されており、種子はタキイ種苗(株)より、機能性野菜シリーズ『ファイトリッチ』の一品種として「PR-7」の名称で供給されている。
  • 「ごちそうトマト」は、「血中LDLコレステロールを低下させる機能」で機能性表示食品としても上市されている。本成果により高リコピントマトの更なる機能性およびその作用機序が示唆されたことから、栽培者や消費者等へのアピールポイントとして利用できる。また、将来的にはヒト試験等を通じて、新たな機能性表示への道を開くことが期待できる。
  • 本研究は動物実験による結果であるため、さらにヒトでの効果の検証が必要であり、現段は直接機能性表示等に利用できるものではない。

具体的データ

表1 投与に用いたトマト試料中のカロテノイド含量,図1 ブドウ糖投与後の血糖値と血中インスリン濃度の変化,図2 トマト投与試験終了時の血中のレプチンとアディポネクチン濃度

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:橋本直人、富永直樹(タキイ種苗(株))、若木学、石川祐子
  • 発表論文等: