廉価なビタミンD類の同時合成法

要約

市販の廉価な植物ステロールから6段階の反応で、ビタミンD類を同時に化学合成する手法である。入手困難なためビタミンD2やD3に比べて解析が遅れているD4~D7を、廉価に供給することが可能になり、ビタミンD類の研究の進展に有効である。

  • キーワード:ビタミンD2~D7、同時合成、植物ステロール、廉価
  • 担当:食品研究部門・食品分析研究領域・成分特性解析ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8012
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ビタミンD類の機能性等の研究は、主にビタミンD2とD3に対して行われており、他のビタミンD4、D5、 D6、 D7は殆ど行われていない。これは、ビタミンD2やD3以外のビタミンD類が、市販されていない、あるいは市販されていても非常に高価であり(表1)、入手困難なことが原因の1つである。そのため、ビタミンD4~D7を廉価に供給できる手法の開発が求められている。
そこで、本研究では安価に入手可能な市販の植物ステロールであるβ-シトステロールを原料に、有機化学的変換により、希少なビタミンD4、D5、D6、D7を含むビタミンD類を同時に合成する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 市販のβ-シトステロールには、それぞれビタミンD2、D4、D5、D6、D7の前駆体であるブラシカステロール、22,23-ジヒドロブラシカステロール、β-シトステロール、スティグマステロール、カンペステロールが含まれており、この試薬を原料に用いることによりビタミンD2、D4、D5、D6、D7の同時合成が可能になる。
  • 市販の天然由来βシトステロール試薬に対し、丸1アセチル化、丸2臭素化、丸3還元、丸4脱アセチル化、丸5光照射、丸6異性化の反応を行った後、目的とするビタミンD2、D4、D5、D6、D7を2種類のHPLCにて単離精製することが可能である(図1)。
  • 本法により、天然由来β-シトステロール試薬からビタミンD2、D4、D5、D6、D7の混合物を全6段階収率4%で合成可能であり、混合物1g当たり約9,000円で合成することができる。
  • 合成したビタミンD類をNMRで解析することにより、各ビタミンDの特徴的NMRシグナルを同定し、NMRを用いたビタミンDの網羅的解析が可能になる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 各種ビタミンD類を合成可能な原料であるβ-シトステロールとして、東京化成工業株式会社から販売されているβ-シトステロール(4,900円/25g)を用いることができる。
  • 市販のビタミンD類やβ-シトステロールの価格は、2019年時点の価格であり、入手時期や製品等により価格は変わり得る。

具体的データ

表1 各ビタミンD市販品の価格,図1 市販の天然由来βシトステロール試薬を用いたビタミンD2、D4、D5、D6、D7の合成,図2 ビタミンD2、D3、D4、D5、D6、D7のHSQC-NMR

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2018~2019年度
  • 研究担当者:今場司朗
  • 発表論文等:Komba, S. et al. (2019) Metabolites 9:107. doi:10.3390/metabo9060107.