生合成阻害剤を用いたアフラトキシン産生菌の高感度な判別法
要約
生化学的・菌学的手法を用いて、生合成阻害剤によるアフラトキシン産生菌コロニーの簡易判別法(平板培地上、アンモニア蒸気による赤変を検出)を高感度化する。また、実際の圃場の土壌サンプルに適用可能である。
- キーワード:アフラトキシン、アスペルギルス属、ジクロルボス(DV)、アンモニア(AM)、土壌
- 担当:食品研究部門・食品安全研究領域・食品化学ハザードユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-8014
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
アスペルギルス属に属する一部の菌が産生するかび毒・アフラトキシン(AF)は、強力な発がん性と急性毒性を有し、諸外国で規制値が設定されている。2011年に非流通の玄米から規制値を超えるAFが検出されるなど、国産農産物にもAF汚染が起こりうることが示された。近年の地球規模での気象変動により、熱帯・亜熱帯特有とされたAF産生菌の分布域が北上している可能性が有ることから、調査のための簡便なAF産生菌の判別法が求められている。
本研究では、AF生合成研究の知見を活かし、AF生合成阻害剤(AF生合成中間体を蓄積する薬剤)を用い、AF産生菌の簡便な判別法の高感度化を行うとともに、圃場土壌における適用性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- AFは一部のアスペルギルス属菌が有する複雑な生合成経路で産生される。AF生合成酵素VHAエステラーゼの阻害剤として、農薬ジクロルボス(DV)がある。AF産生菌へのDV投与によりAF生合成中間体(アントラキノン型化合物)であるversiconal hemiacetal acetate (VHA)とversiconol acetate (VOAc)が蓄積する(図1)。
- これまでにAF産生菌の簡易判別法として、平板培地上のコロニーをアンモニア(AM)蒸気による赤変を指標として検出する方法(AM法)が開発されている(Saito and Machida, Mycoscience 40, 205-208, 1999)(図2上段)。
- 菌体接種前に平板培地にDVを塗布して菌体内のVHA、VOAcを蓄積させることで、pH上昇による色調変化が鋭敏になり、より明瞭に可視化できる(図1、図2下段)。
- 本手法により、高額な分析機器や高度な技術を用いることなく、農研機構つくば地区の試験圃場の土壌から、AF産生菌を分離できている(図3)
成果の活用面・留意点
- DVは特定化学物質に指定されている農薬であり、取扱い時は吸引フード内で使用する等、吸入暴露に注意する。
- つくば地区の試験圃場の土壌サンプル(1箇所)における検出・分離結果であり、今後点数を増やして検証する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
- 研究期間:2016~2019年度
- 研究担当者:久城真代、矢部希見子(福井工大)
- 発表論文等: