高圧加工果実コンポートの製造法

要約

脱気処理後に中高圧処理して調味液を果実に含浸し、中温殺菌することで、生の食感を感じさせる高品質のコンポートを製造し、通年供給可能とした。収穫期の限られた果実を加工し、デザートまたは生菓子等の原料として利用することができる。

  • キーワード:果実 高圧 コンポート 高品質 冷蔵保存 通年供給
  • 担当:食品研究部門・食品加工流通研究領域・食品製造工学ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

収穫期の短い果実を収穫期外にも喫食できるようにするために、そして、高品質の国産果実を海外展開するためには、長期保存可能な果実加工品が不可欠である。従来法の熱加工では、食感劣化等の品質低下が問題となっている。
本研究では、「脱気中温中高圧加工法」(特許出願)を開発し、冷蔵での長期保存が可能で、生の食感を残した新規な高品質果実コンポートの製造を可能とする。

成果の内容・特徴

  • 剥皮、除芯、切断等の前処理を施した果実(リンゴ、ナシ、カキ、モモ等)を、中温中高圧処理(100 MPa, 65°C, 30分間)により、高圧加工コンポートに加工することで、果実加工品の通年供給が可能になる。
  • 冷蔵長期保存中の衛生を確保し、果肉褐変を抑制する目的で、ビタミンC等の褐変抑制剤を添加した低pH調味液を使用する。また、酸素透過性の低い高バリア性包装資材で密閉することにより、更に褐変抑制効果を高める。
  • 各種高圧加工コンポートの15ヶ月間長期冷蔵保存試験結果で微生物不検出となったことから、1年間の賞味期限付与が可能である(表1)。
  • 熱加工による既製品よりも価格は高くなるが、収穫期が限定された果実を、生に近い食感の新感覚果実加工品として通年供給可能できるので、新たな市場展開が期待できる。消費者にはデザートまたは地域特産品として、事業者には菓子用加工素材として訴求力がある(図1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:果実加工事業者・果実利用加工品製造業者(洋菓子及び和菓子の製造業者)
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:国内外全域
  • その他:
    • 本成果に関する特許は出願済であり、既に実施許諾されている。高圧加工装置を用いての加工が不可欠であるため、果実の前処理(皮むき等)が可能な事業者と、前処理果実の加工事業者とが、消費者及び果実利用加工品製造業者による需要に鑑み、実施許諾により製造する。
    • 対象果実の高圧加工コンポートへの加工適性については、個別に対応する。

具体的データ

表1 未洗浄果実を用いた高圧果実コンポートの衛生試験(ND: 不検出),図1 脱気中温中高圧加工法による高圧加工果実コンポート及びその加工利用

その他

  • 予算区分:交付金(2015-2017)、委託プロ(農水省実用技術開発 プロ2012~2014)、29補正「経営体プロ」(2018~2020)
  • 研究期間:2012~2020年度
  • 研究担当者:
    山本和貴、中浦嘉子、鈴木忠宏、稲岡隆史、渡邊高志、山崎慎也(長野県工技セ)、高橋佑汰(長野県工技セ)、竹内正彦((一社)長野県農工研)、大日方洋(デイリーフーズ(株) )、三輪章志(石川農研セ)、有手友嗣(石川農研セ)、中村恵美(石川農研セ)、林美央(石川農研セ)、安原里美(石川農研セ)、上田恒一((株)スギヨ)、小原涼太((株)スギヨ)、新川猛(岐阜農技セ)、神谷仁(岐阜農技セ)、野口琢史((株)東洋高圧)、森川篤史((株)東洋高圧)
  • 発表論文等:
    • 山本ら(2016)「食品に対する脱気・加熱・加圧処理方法」特願2016-207719(平成28年10月24日)
    • 中浦 (2017), 食品と容器, 58:460-466