全国の農耕地土壌の保水性や透水性を示す土壌物理特性値マップ

要約

都道府県、土壌グループ、土壌層位ごとに飽和透水係数、孔隙分布特性に応じた土壌水分量とこれらから計算される有効水分容量を整備した土壌物理特性値マップである。本マップは「日本土壌インベントリー」上で公開されており、地域ごとの土壌水分状態に関わる基礎情報が把握できる。

  • キーワード:土壌物理特性値マップ、デジタル農耕地土壌図、日本土壌インベントリー
  • 担当:農業環境変動研究センター・気候変動対応研究領域・影響予測ユニット
  • 代表連絡先: niaes_manual@ml.affrc.go.jp
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

土壌の水分保持の特徴(保水性や透水性)を知ることは畑作物の栽培にとって重要である。保水性を表す指標として孔隙分布特性や有効水分容量が、また、透水性(土壌中の水の移動のし易さ)を示す特性値として飽和透水係数が用いられるが、これらの特性値は土壌の種類や地域によって大きく異なる。そこで、農林水産省事業の土壌環境基礎調査で得られた全国約2万地点(各地点5年ごとに4回測定)の土壌特性値の調査結果を都道府県別の土壌グループおよび土壌層位ごとに整理しデータベース化するとともに、デジタル農耕地土壌図と結合することで土壌の保水性や透水性を示す特性値マップとして公開する。

成果の内容・特徴

  • データベースには、土壌の保水性を示す特性値として、作土層(地面からおよそ16cmまでの層)とその直下層(およそ16~36cmまでの層)の最大容水量、圃場容水量、初期しおれ点、永久しおれ点のそれぞれに対応する土壌水分量と、0~30cmまでの有効水分容量(圃場容水量から永久しおれ点までの間の水分量)が含まれる。また、土壌の透水性を示す特性値は、作土層とその直下層の飽和透水係数が含まれる。
  • これらの特性値は、土壌中の粘土含量や有機物含量により大きく異なる。そこで、土壌中の粘土含量や有機物含量をもとにデジタル農耕地土壌図の土壌分類を10グループに整理し(図1)、さらに都道府県別・土壌層位ごとにこれらの特性値を集計したものが、土壌物理特性値のデータベースである。これにより、土壌大群別の集計に比べ粘土含量等に起因する特性値のばらつきが小さくなる。
  • データベースに格納されている都道府県別・土壌グループ別の保水性および透水性に関する特性値の中央値を、デジタル農耕地土壌図と組み合わせて作成したものが土壌物理特性値マップである(図1)。
  • 土壌物理特性値マップはWEBシステム「日本土壌インベントリー」にて公開予定である。このWEBシステムで表示される土壌物理特性値マップでは、任意地点をクリックすると、その地点の土壌グループに応じた特性値が表示される。さらに、都道府県別・土壌グループ別の頻度分布のグラフも見ることができる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 土壌の保水性や透水性を示す特性値マップがWEB上で可視化されることにより、農作物の水管理を行う上で重要な土壌水分に関する基礎情報を容易に把握することができる。
  • 土壌物理特性値のデータベースを利用することで、土壌中の水分推移を推定するモデルの開発や高度化が可能となり、土壌の湿害や水分ストレスを考慮した営農への貢献が期待される。
  • 土壌物理特性値マップは日本土壌インベントリー(https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/)で閲覧できる。

具体的データ

図1	土壌の保水性や透水性を示す特性値のデータベースのイメージ(上段)と土壌物理特性値マップ(下段)の関係,図2	「日本土壌インベントリー」上での土壌物理特性値の表示の例(左図)

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(GRENE)
  • 研究期間:2011~2018年度
  • 研究担当者:滝本貴弘、高田裕介、桑形恒男
  • 発表論文等:滝本ら(2017)土肥誌、88(4):309-317