簡易型サイロによる空隙と補助剤を用いた新たな発酵飼料調製法
要約
ドラム缶サイロ等の簡易型サイロでの発酵飼料調製時に、上部に空隙を確保すること、脱酸素剤とエタノール蒸散剤を配置することで、かび発生が抑制され、サイレージ発酵が亢進し、安定した発酵飼料を調製できる。
- キーワード: エタノール蒸散剤、空隙、サイレージ調製補助剤、脱酸素剤
- 担当: 動物衛生研究部門・病態研究領域・中毒毒性ユニット
- 代表連絡先: 電話 029-838-7937
- 分類: 普及成果情報
背景・ねらい
飼料用米や発酵TMR等の発酵飼料を調製するサイロとして、フレコンバックやドラム缶などの簡易型のサイロが普及している。これらのサイロは、初期投資の削減、運搬が容易であること、飼料原料や家畜の飼養規模に応じて種々の容量で調製できるなどの利点がある。しかしながら、これらの簡易型のサイロで調製したサイレージは、嫌気性の確保が困難なために、かびの発生やサイレージ発酵が十分に進まない事例が頻繁に発生している。このようなサイレージは飼料の栄養価を保持できないだけではなく、飼料衛生の観点からも問題となる。また、調製した発酵飼料を家畜飼育者に販売する場合は、品質を担保できないために商品価値が大きく損なわれる。そこで、簡易型サイロによる発酵飼料サイレージの調製において、かびの発生を抑制し、安定してサイレージ発酵が亢進する調製技術を開発する。
成果の内容・特徴
- ドラム缶やフレコンバックをサイロとして使用した発酵飼料の調製時に、サイロに充填する飼料原料(飼料用米等)を容器の8~9割程度に留め上部に空隙を確保すること、脱酸素剤とエタノール蒸散剤をサイロ内の飼料原料の表面に配置することで(図1)、かびの発生を抑制し(図2)、サイレージの発酵品質を向上(pHの減少、乳酸濃度の上昇、酢酸濃度の低下)させる(図3)。
普及のための参考情報
- 普及対象:飼料用米生産者、家畜生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:国内TMRセンター、農業者団体などの飼料生産者、中間山地小規模家畜飼養農家など。
- 脱酸素剤とエタノール蒸散剤は、日本化薬フードテクノ社(群馬県高崎市)より発売されている。
- 脱酸素剤:モデュランW-5L, 20L、原材料1kgあたり約0.6~2.6円
- エタノール蒸散剤:オイテックL-24G, L-42G、原材料1kgあたり約0.5~4円
※注1:サイロ容量に比例して配置する
※注2:上記容量は目安であり、サイロのガスバリア性に依存する
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間: 2014~2015年度
- 研究担当者: 上垣隆一、木村俊之、大澤玲(埼玉県農業技術研究センター)、川野和男(日本化薬フードテクノ)
- 発表論文等:
1) 上垣ら「発酵飼料の製造方法」特願2015-158301 (2015年8月10日)
2) 上垣ら「発酵飼料製造用改善剤、及び発酵飼料の製造方法」特願2015-158307 (2015年8月10日)
3) Uegaki R. et al. (2017) J. Agric. Food Chem. 65(24):4877-4882