サルモネラに対する感染防御にはたらくモノクローナル抗体を作製

要約

国内外の研究機関に先駆けて作製したサルモネラ感染防御に関わるモノクローナル抗体は、マクロファージにおける菌の取り込みと殺菌能を高める。

  • キーワード:サルモネラ、モノクローナル抗体、感染防御、液性免疫応答
  • 担当:動物衛生研究部門・細菌・寄生虫研究領域・細胞内寄生菌ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7937
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

サルモネラはヒト、家畜などの腸管に感染し、食中毒を起こす原因菌の一つである。サルモネラに対する宿主免疫応答は、細胞性免疫が優位に働くことが報告されているが、液性免疫(抗体)応答も感染防御に関わっていることが確認されている。しかしながら、液性免疫を介した防御機構は不明な点が多い。そこで、本研究では、サルモネラ感染防御に関与するモノクローナル抗体を作製し、サルモネラ感染防御における液性免疫応答の役割を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 作製したモノクローナル抗体(抗サルモネラモノクローナル抗体)は、図1に示すとおり、サルモネラ感染に対して防御効果を示す。
  • 抗サルモネラモノクローナル抗体でサルモネラを処理すると、図2に示すとおり、マクロファージへのサルモネラの取り込みを促進させる。
  • サルモネラはマクロファージ内で生存・増殖できる機能を有しているが、本抗体でサルモネラを処理し、マクロファージに貪食させると、マクロファージが活性化し、速やかにサルモネラが排除される(図3)。
  • 本抗体が認識する抗原は、サルモネラ外膜構成成分の一つであるリポ多糖である。
  • 本抗体が認識する抗原(リポ多糖)は、サルモネラの感染防御抗原である。

成果の活用面・留意点

  • サルモネラ感染に対する液性免疫応答の機構解析により、これまで不明であったサルモネラが体内から排除される仕組みが明らかとなる。
  • 抗サルモネラモノクローナル抗体が認識する抗原(リポ多糖)による感染防御の有効性などを詳細に解析することで、新規ワクチンの開発に寄与する。

具体的データ

図1 抗サルモネラモノクローナル抗体移入マウスにおけるサルモネラ感染に対する防御?図2 共焦点レーザー顕微鏡によるマクロファージ内のサルモネラ?図3 マクロファージ内のサルモネラ生存率

その他

  • 予算区分:競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2013~2016年度
  • 研究担当者:Swarmistha Devi Aribam、原田知享、Marta Elsheimer-Matulova、岩田剛敏、金平克史、彦野弘一、松井英則(北里大)、小川洋介、下地善弘、江口正浩
  • 発表論文等:Aribam SD. et al. (2016) PLoS One 11(3): e0151352