2010年に日本で分離された口蹄疫ウイルスの感染性cDNAクローンの構築

要約

2010年口蹄疫ウイルス日本分離株のゲノムを基に感染性cDNAを構築した。これを用いて得られたウイルスは、親ウイルスと同様の性状や豚への病原性を示す。

  • キーワード:口蹄疫ウイルス、感染性cDNA、病原性
  • 担当:動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域 海外病ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7937
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

口蹄疫ウイルスは、株によって病原性や宿主特異性等の性状が異なる。日本は2000年、2010年と近年で2回の口蹄疫発生を経験したが、2000年の発生原因株は牛、山羊、羊に対して病原性が低く、一方、2010年の発生原因株は牛、豚、山羊に対し典型的な病原性や感染力を示すウイルス株である。感染動物が症状を呈するとウイルスの排泄量が多くなるため、伝播力が高くなり、より甚大な被害を畜産業にもたらす。本研究では、口蹄疫ウイルスの病原性や感染・増殖に関与する遺伝子の探索・解析に必要な感染性cDNAの構築を目指す。

成果の内容・特徴

  • 構築した感染性cDNAクローンは、2010年口蹄疫発生時の材料から得られたO/JPN/2010株(親ウイルス)のゲノムRNA全長のcDNAを哺乳類動物細胞発現プラスミドベクターに組み込んだものである。これを哺乳類動物細胞に導入することにより、感染性を有するウイルスを得ることが可能である(図1)。
  • cDNA由来ウイルスは、豚胎子腎株化細胞において親ウイルスと同様の増殖性を示す(図2)。
  • cDNA由来ウイルスを接種した豚は、親ウイルスを接種した豚と同様の症状、ウイルス排泄ならびに抗体応答を示す(表1)。

成果の活用面・留意点

  • この感染性cDNAを用いて、人為的に遺伝子を欠損させたウイルスや、性状の異なる株との遺伝子組換えウイルスを作出することによって、病原性や感染・増殖に関与する遺伝子を明らかにできる。その結果得られたデータは、迅速な流行ウイルスの性状予測や新規ワクチンの開発に活用されることが期待される。

具体的データ

図1 2010年に日本で分離された口蹄疫ウイルスの感染性cDNAクローンの構築?図2 豚胎仔腎株化細胞におけるウイルスの増殖性?表1 親ウイルスおよびcDNA由来ウイルスの豚に対する病原性

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2013~2016年度
  • 研究担当者:西達也、小野里洋行、大橋誠一、深井克彦、山田学、森岡一樹、嶋田伸明、菅野徹
  • 発表論文等:Nishi T. et al. (2016) Res. Vet. Sci. 106:165-169