ヒト由来H7N9亜型鳥インフルエンザウイルスに対する各種鳥類の感受性

要約

2013年4月中国で感染したヒトから分離されたH7N9亜型鳥インフルエンザウイルスは鳥類に対する病原性は低いが、ウズラで高いウイルス増殖が認められる。ヒト由来のウイルスを発育鶏卵で継代することにより、ニワトリでのウイルス増殖能が上昇する。

  • キーワード:H7N9亜型、鳥インフルエンザ、ニワトリ、ウズラ、ハト
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・インフルエンザユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7937
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2013年4月に中国政府は鳥類に起因するH7N9亜型鳥インフルエンザウイルス(AIV)のヒトへの感染事例を報告した。中国でのヒトでの感染が拡大しパンデミックが発生した場合、ヒトを介して我が国にウイルスが侵入し、ヒトから家禽にウイルスが伝播する可能性がある。家禽にH7亜型ウイルスが感染した際には家畜伝染病予防法上の法定伝染病として取り扱われる為、ヒトに由来するH7N9亜型AIVの家禽への感染性の評価は重要な課題である。
本研究は中国でヒトの致死的感染事例から分離されたH7N9亜型AIVを用いてニワトリ、ウズラ及びハトを用いた感染実験を行い、感染鳥類の病態やウイルスの体内動態、鶏卵継代に伴うニワトリへの適合性の変化を知ることを目的としている。

成果の内容・特徴

  • 2013年4月中国でヒトから分離されたH7N9亜型AIVは、ニワトリ、ウズラ及びハトに感染するが、これら鳥類に対する病原性は低い。3種の中で最も高いウイルス増殖が認められる宿主はウズラである(図1)。
  • 本ウイルスに感染したニワトリ及びウズラのクロアカ(総排泄口)からのウイルス排泄は、気管及び口腔と比較するとかなり低い為、本ウイルスのモニタリングには糞便及びクロアカスワブを用いたウイルス検査は適していない
  • 10日齢の発育鶏卵でヒト由来H7N9亜型インフルエンザウイルスを継代すると、4代目でウイルスが宿主細胞に結合するタンパク質(ウイルス受容体結合部位)がヒト型からトリ型に変化する。
  • 10日齢の発育鶏卵で13代継代したヒト由来H7N9亜型インフルエンザウイルスのニワトリ体内での増殖能は、継代前よりも有意に上昇する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • H7N9亜型インフルエンザウイルスの鳥類に対する病原性は低いため、感染に気づかずにウイルスが拡散してしまう可能性がある。
  • ウズラは感染しても死亡せず多量のウイルスを排泄するため、H7N9亜型AIVの増幅宿主となりうる。
  • H7N9亜型AIVのウイルス受容体結合部位は変化しやすく宿主への適応が起きやすい。

具体的データ

図1 各鳥類がH7N9亜型AIVに感染した際のウイルス排泄量の比較?図2 ヒト由来H7N9亜型鳥インフルエンザウイルスの卵継代によるニワトリ体内での増殖性の変化

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2013~2016年度
  • 研究担当者:内田裕子、金平克史、竹前喜洋、彦野弘一、西藤岳彦
  • 発表論文等:Uchida Y. et al. (2016) Arch. Virol. 印刷中