H5N8亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス感染鶏から鶏卵へのウイルス移行

要約

H5N8亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)に感染した鶏は感染後4日まで産卵したが、感染後の産卵数は感染前と比較して有意に減少する。感染3日以降に産卵された卵の表面、卵白及び卵黄からウイルスが検出された。

  • キーワード:H5N8亜型、高病原性鳥インフルエンザ、鶏、鶏卵、ウイルス移行
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・インフルエンザユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7937
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2014-2015年冬季に家禽及び野鳥でのH5N8亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)感染が認められた。H5亜型HPAIVが鶏に感染してから死亡するまでの期間は2日から7日以上と各ウイルスにより異なることが知られている。感染から死亡するまでの経過の長いウイルスに採卵鶏が感染した場合、ウイルスが卵内に移行して汚染拡散の原因となり得ることが懸念される。本研究ではウイルスの卵内移行動態を明らかにするとともに、感染後の鶏の産卵率について検討する。

成果の内容・特徴

  • 2014年冬季に鶏から分離されたH5N8亜型HPAIVに感染した鶏は感染後8日以内に全て死亡する。感染後4日までに、全ての鶏が沈うつ、緑色便、顔面の浮腫、肉冠のチアノーゼ等インフルエンザに特徴的な症状を示し、感染後顕著な平均産卵率の低下が認められる(図1)。
  • 感染した鶏は感染後1-4日目に産卵したが、卵からウイルスが検出されるのは感染後3日以降である。
  • 感染後に産卵された11個の卵のうち感染後3日以降の3個の卵の表面、卵白及び卵黄からウイルスが分離される(図2)。
  • 卵へのウイルス移行の有無は感染個体から排泄されるウイルス量と相関している。

成果の活用面・留意点

  • HPAIV感染鶏で認められる産卵率の顕著な低下はHPAIV感染の1つの指標となる。
  • HPAIV感染後に産卵された卵がウイルスに汚染されていることが明らかとなったため、感染源として留意すべきである。

具体的データ

図1 H5N8亜型HPAIV接種8日前後の産卵数の変化?図2 感染後産卵された卵からのウイルス検出の有無

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2014~2016年度
  • 研究担当者:内田裕子、竹前喜洋、谷川太一朗、金平克史、西藤岳彦
  • 発表論文等:Uchida Y. et al. (2016) Avian Dis. 60:450-453