立体構造を保持した組換えプリオン蛋白質の高純度精製法の開発
要約
温和な条件下における三段階の精製法により、立体構造を保持したバキュロウイルス由来組換えプリオン蛋白質の高純度精製が可能になる。精製した組換えプリオン蛋白質は異常型への構造変換能を有する。
- キーワード:バキュロウイルス、組換えプリオン蛋白質、立体構造、異常型
- 担当:動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域 プリオン病ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-7937
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
プリオン蛋白質の構造解析や分子間相互作用解析、抗体の作製等を行うためには、立体構造を保持した高純度なプリオン蛋白質が必要である。本研究では、温和な条件下で行う三段階からなる精製方法を開発し、異常型への構造変換能を保持したバキュロウイルス由来組換えプリオン蛋白質の高純度精製を目指す。
成果の内容・特徴
- プリオン蛋白質のN末端側に、ヒスチジンタグおよびプロテアーゼ感受性タグを付加したプリオン蛋白質遺伝子を設計する。
- 上記遺伝子をバキュロウイルスベクターに組み込み、昆虫細胞で組換えプリオン蛋白質を発現させる。
- 第一段階は、金属イオンを固定化したカラムに吸着したヒスチジンタグおよびプロテアーゼ感受性タグ付組み換えプリオン蛋白質を選別する。第二段階は、プロテアーゼ処理により、プリオン蛋白質のみを溶出させる。第三段階は、プリオン蛋白質のN末端領域と結合するカラムを用いて精製する(図1)。
- 精製後の組換えプリオン蛋白質の純度は約95%である(図2)。
- 精製後の組換えプリオン蛋白質は、試験管内増幅法(PMCA法)により異常型に構造変換されることから、正しい立体構造を維持していると考えられる(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本研究で得られた高純度組換えプリオン蛋白質は異常型構造への変換メカニズムを明らかにする上で重要なツールとなる。
- 本精製法は、プリオン蛋白質以外の生理活性や立体構造の保持が必要である組換え蛋白質の精製にも応用可能である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2016年度
- 研究担当者:今村守一、多辺田奈保子、加藤伸子、松浦裕一、岩丸祥史、横山隆、村山裕一
- 発表論文等:Imamura M. et al. (2017) Prep. Biochem. Biotechnol. 47(1):1-7