子豚で高い病原性を示した豚デルタコロナウイルスは近年の海外流行株と近縁である
要約
北海道の一養豚農場で高率に子豚が死亡する豚デルタコロナウイルス感染症例が発生した。分離ウイルスの遺伝子解析結果は、近年の海外流行株と近縁で、病原性の強い株に共通した非構造タンパク遺伝子の欠失変異があることを示す。
- キーワード:豚デルタコロナウイルス、次世代シーケンサー、全ゲノム配列、欠失変異
- 担当:動物衛生研究部門、ウイルス・疫学研究領域・発病制御ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-7764
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
豚デルタコロナウイルス感染による急性下痢で子豚が死亡することは稀である。しかし、2016年9月、北海道の一養豚農場において1週間以内に約20%の子豚が死亡する事例が発生し、本ウイルスに起因することが報告された。本研究では、死亡子豚から分離された豚デルタコロナウイルスの全ゲノム配列を解析することにより、その遺伝学的特徴を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 次世代シーケンサーによる全ゲノム配列の解析結果は、死亡子豚から分離された株が米国や韓国で流行した株と近縁であることが示している(図)。
- 本株はタイで発見された子豚に高い病原性を示す株と同様に、非構造タンパク質遺伝子の一部に3塩基の欠失(1アミノ酸に相当)を有していることから、この欠失変異が豚デルタコロナウイルスの病原性に関与する可能性を示している。
成果の活用面・留意点
- 次世代シーケンサーを活用した全ゲノム配列解析は、ウイルスの分子疫学的特徴や病原性などの生物学的特徴を把握する上で有用である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2016~2017年度
- 研究担当者:鈴木亨、大橋誠一、早川潤(北海道)
- 発表論文等:Suzuki T et al. (2017) Genome Announc. 5:e00795-17