サルモネラO4抗体を用いた凝集反応はO5抗原の有無により凝集値が異なる
要約
血清型O4群に属するSalmonella enterica serovar Typhimurium(S.Typhimurium)はO5抗原保有株とO5抗原欠損株がある。O4抗体を用いたマイクロプレート凝集反応試験は、S.TyphimuriumのO5抗原の有無により凝集値が異なる。
- キーワード:サルモネラ、O5抗原、O4抗体、マイクロプレート凝集反応試験
- 担当:動物衛生研究部門・細菌・寄生虫研究領域・細胞内寄生菌ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-7937
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
サルモネラ属菌は、2,600以上の血清型に分類され、血清型別は、菌体表面にあるO抗原とH抗原の抗原性の相違により分類される。血清型O4群に属するSalmonella enterica serovar Typhimurium(S.Typhimurium)は、O5抗原保有株(O5+:1,4,5,12:i:1,2)とO5抗原欠損株(O5--:1,4,12:i:1,2)がある。サルモネラ属菌のO抗原の血清型別検査は各抗血清を用いた凝集反応試験により判定されている。本研究は、S.TyphimuriumのO5抗原保有株とO5抗原欠損株を用いたO4、O1、O12抗体の反応性を比較検討したものである。
成果の内容・特徴
- S.TyphimuriumO5抗原欠損株に、O抗原のアセチル化に関与するoafA遺伝子を導入するとO5抗原発現株となる(図1、表1)。
- S.TyphimuriumのO5抗原の有無によるO1およびO12抗体による凝集値は変化がない(表1、図2)。
- S.TyphimuriumO5抗原発現株とO5抗原欠損株によるO4抗体の反応性を免疫電子顕微鏡で観察すると、O5抗原発現株の方がO5抗原欠損株に比べて、O4抗体による抗原結合がより少ない(図1)。
- S.TyphimuriumO5抗原発現株とO5抗原欠損株のO4抗体によるマイクロプレート凝集反応試験は、O5抗原発現株の方がO5抗原欠損株より凝集値が低い(表1)。
- S.Typhimuriumの野外分離株によるO4抗体のマイクロプレート凝集反応試験は、図2に示すとおり、O5抗原保有株の方がO5抗原欠損株より凝集値が低い。
成果の活用面・留意点
- S.Typhimuriumの抗原抗体反応は、O5抗原の有無によりO4抗原のみ凝集値が異なる。
具体的データ

その他
- 予算区分:競争的資金(科研費)
- 研究期間:2016~2018年度
- 研究担当者:中井悠華(埼玉県)、伊藤秋久(三重県)、小川洋介、Swarmistha Devi Aribam(JSPS)、Marta Elsheimer-Matulova(JSPS)、白岩和真、Stevens M.B. Kisaka(JICA)、彦野弘一(岩手大)、西川明芳、秋庭正人、川原一芳(関東学院大)、下地善弘、江口正浩
- 発表論文等:Nakai Y. et al. (2017) FEMS Microbiol. Lett. 364(7):fnx062