国内で流行している豚丹毒菌強毒株の簡易な遺伝子型別法の開発
要約
系統学的に九州型と本州型とに大別される国内で流行している豚丹毒菌強毒株は、マルチプレックスPCR法で容易に型別できる。
- キーワード:豚丹毒、国内流行株、マルチプレックスPCR、遺伝子型別
- 担当:動物衛生研究部門・細菌・寄生虫研究領域・細胞内寄生菌ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-7937
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
近年、野生動物を含めて世界規模で豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)による感染症が増加しているが発生の詳しい要因は分かっていない。日本及び中国においても、豚での急性型豚丹毒の発生が急増しており、これまでのゲノムワイド解析の結果から、中国と国内で分離される強毒株は共通の祖先を起源としており遺伝学的に近縁な集団株であることが判明している。また、2007年以降に分離された国内分離株は系統学的に同一の系統(lineage IV)に属し、さらに、近年の分離株は大きく分けて九州型(lineage IVb-1)と本州型(lineage IVb-2)とに分類されるが、その疫学的、病原学的意義は不明である。そこで、本研究では、国内における本症の疫学調査に向け、豚丹毒菌強毒株の簡易遺伝子型別法の開発を行う。
成果の内容・特徴
- lineage IVbに属する株が共通に保有する一塩基多型(SNP)、また、九州型(lineage IVb-1)と本州型(lineage IVb-2)のそれぞれの型が特異的に保有するSNPを同定する。これらのSNPをターゲットとして3組のプライマーセットをデザインする。
- これらのプライマーセットを混合した反応液を用いてPCRを行うと、2007年以降に分離された国内株(lineage IVb)のすべての株で増幅される1195-bpのバンド、また、九州型(lineage IVb-1)と本州型(lineage IVb-2)とでそれぞれ増幅される851-bp及び574-bpのバンドが検出される(図1)。
- Erysipelothrix属の他の血清型菌株、様々な動物種由来菌株、また、地理的起源の異なる野生株を含む合計127株についてPCRを行うと、本法は現在の国内流行株のみを検出することができる(表1)。
- 本法は、国内養豚場で流行している強毒株(血清型1a)を検出可能であり、現行のゲル内沈降反応による血清型の同定検査を省略できる。
成果の活用面・留意点
- 本法は、国内における豚の移動、流通、その他汚染源の把握など、豚丹毒発生の疫学解析に利用できる。また、極東アジアでの疫学解析にも利用可能と考えられる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2017~2018年度
- 研究担当者:下地善弘、白岩和真、小川洋介、西川明芳、江口正浩
- 発表論文等:Shiraiwa K. et al. (2017) J. Vet. Med. Sci. 79:1318-1322