鶏ユビキチン特異的プロテアーゼ18は鳥インフルエンザウイルスの増殖を促進させる

要約

鶏のユビキチン特異的プロテアーゼ18(USP18)は、I型インターフェロン(IFN I)によって増加した自然免疫関連分子を減少させ、免疫系の恒常性を保つ働きがある。鳥インフルエンザウイルスは鶏USP18が持つこの機能を利用し、効率よく増殖する。

  • キーワード:鳥インフルエンザウイルス、鶏、自然免疫、USP18
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・インフルエンザユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7937
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

高病原性鳥インフルエンザウイルス感染による発症、致死作用は宿主とウイルスの相互作用によるものであり、ウイルスの病原性発現の仕組みを理解するためには、ウイルス側の要因だけでなく宿主側の要因を明らかにすることが重要である。本研究は、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した鶏の肺で発現量の増加が見られた遺伝子群のなかで、鶏における機能が分かっていないUSP18に着目し、USP18が鳥インフルエンザウイルス感染時にどのように働くかを明らかにすることを目的としている。

成果の内容・特徴

  • 鶏USP18は、43.8kDaの分子量に相当する379個のアミノ酸で構成される。
  • 鶏USP18は、IFN Iの刺激によって発現量が増加する(図)。
  • IFN I刺激によってUSP18が増加した鶏細胞にH9N2亜型鳥インフルエンザウイルスを感染させると、ウイルス増殖が促進される(図)。
  • 鶏USP18発現を抑制した状態の鶏細胞をIFN Iで刺激すると、刺激によって増加した自然免疫関連分子の発現が長時間維持される。このような状態の鶏細胞にH9N2亜型鳥インフルエンザウイルスを感染させると、ウイルス増殖が抑制される(図)。

成果の活用面・留意点

  • 鶏USP18は自然免疫関連分子の発現を制御することで免疫系の恒常性維持の一役を担っていると考えられる。
  • 鳥インフルエンザウイルスは鶏細胞の中で効率よく増殖するために、鶏USP18の機能を利用していると考えられる。

具体的データ

図 鳥インフルエンザウイルスに感染した鶏におけるUSP18とウイルス増殖との関係

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2013~2017年度
  • 研究担当者:谷川太一朗、内田裕子、西藤岳彦
  • 発表論文等:Tanikawa T. et al.(2017)J. Gen. Virol. 98(9):2235-2247