新規鳥パラミクソウイルスベクターを用いた高病原性鳥インフルエンザワクチンの作出

要約

鳥パラミクソウイルス血清型2、6及び10をベクターとする組換え鳥インフルエンザワクチンは、ニューカッスル病ワクチンで免疫された鶏においても、高病原性鳥インフルエンザウイルス感染に対する免疫を誘導することが可能である。

  • キーワード:インフルエンザワクチン、高病原性鳥インフルエンザ、鳥パラミクソウイルス、ニューカッスル病ワクチン、ワクチンベクター
  • 担当:動物衛生研究部門・越境性感染症研究領域・インフルエンザユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7937
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)に対する組換えベクターワクチンとして、ニューカッスル病(ND)ウイルスをベクターとした組換えワクチンが開発されている。この組換えワクチンは、飲水、点眼等の省力的な投与によりHPAIウイルス(HPAIV)の感染する呼吸器粘膜に防御免疫を誘導することが可能である。一方で、日本を初め世界で飼育されている多くの商用家きんはNDワクチンを投与しているため、NDウイルスをベクターとした組換えワクチンの効果が阻害される問題がある。
そこで本研究では、NDワクチンで免疫された鶏にも免疫誘導が可能な鳥パラミクソウイルス血清型2、6および10(APMV-2、-6および10)をベクターとする組み換えワクチンを作製し、その効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • APMV-2、-6および10のゲノムに、遺伝子組換え技術を用いてHPAIウイルスのHA遺伝子を挿入することにより作出した組換え体rAPMV-2/HA、-6/HAおよび-10/HAは、ワクチン抗原としてHAタンパク質を発現する(図1)。
  • 事前にNDワクチンで免疫した鶏にrAPMV-2/HA、-6/HAおよび-10/HA組換えベクターワクチンを使用してその後HPAIウイルスを感染させると、全羽死亡するNDウイルスベクターrNDV/HAワクチン群と比較して、鶏の生存率はそれぞれ50%、50%及び25%と上昇する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • APMV-2、-6および-10をベクターとする組換えワクチンは、NDワクチンで事前に免疫された鶏においてもHPAIVの感染に対する防御免疫を誘導することが可能である。
  • HPAI感染における生存率を上昇させるために、APMVをベクターとした組換えワクチンの改良をする必要がある。
  • 点眼投与よりも実用的なワクチン接種方法として飲水投与によるワクチン効果についても検討する必要がある。

具体的データ

図1 組換えAPMV/HAの作製;図2 組換えワクチンで免疫した鶏のHPAIV攻撃後の生存率

その他

  • 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
  • 研究期間:2014~2017年度
  • 研究担当者:常國良太、谷川太一朗、倉田里穂、彦野弘一、中屋隆明(京都府立医大)、西藤岳彦
  • 発表論文等:Tsunekuni R. et al. (2017) Avian Dis. 61(3):296-306