ヨーネ病感染牛は持続的な排菌の前に一過性に排菌することがある
要約
ヨーネ病の感染牛は、感染後12か月からおよそ4か月間、一過性に排菌した後、感染後およそ30か月で持続的な排菌が始まる。血液中の抗体は、持続的排菌が始まった7か月後から出現する。
- キーワード:ヨーネ病、ヨーネ菌、サーベイランス、糞便検査、抗体検査
- 担当:動物衛生研究部門・ウイルス・疫学研究領域・疫学ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-7937
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
牛のヨーネ病は、子牛の時期にヨーネ菌に感染した牛が数年後に発症して慢性の下痢や体重減少を示す疾病で、牛乳の生産性の低下などを招く。このため、日本では、農林水産省によって全国的な清浄化対策が進められており、定期的な検査や発生農場の検査で摘発された感染牛は法律に基づいて殺処分されている。こうした清浄化対策の有効性を評価するためには、数十年間にわたって検査による摘発や感染の拡大をコンピューター上でシミュレーションすることが有効である。この際、ヨーネ病の摘発に用いられている糞便検査や血液を用いた抗体検査の有効性を正しく考慮する必要があるが、そのためには、感染牛が糞便中にヨーネ菌を排出する時期や、血液中に抗体を発現する時期を推定する必要がある。こうした排菌時期や抗体の出現時期は、地域のヨーネ病浸潤状況や牛の飼育方法の影響を受けるため、国内の一地域でこれまでに検査された乳用牛の記録に基づいて、これらの時期を推定する。
成果の内容・特徴
- ヨーネ病のサーベイランスについては、地域ごとに検査のスケジュールが決まっていることから、各農場の摘発記録から、検査時の牛の月齢ごとに、検査頭数と陽性頭数を推定できる。
- ヨーネ病感染牛における、感染から排菌の開始や抗体の発現までに関する数理モデルを作成し、感染が主に生後6か月未満で起こるといった仮定を置くことで、排菌の開始と抗体の発現時期を推定できる(表)。これらの推定値を用いて月齢ごとに算出した陽性頭数は、サーベイランスの結果から推定された陽性頭数と一致する(図)。
- 感染牛は、感染後12か月(95%信用区間:8~16か月)で一過性に排菌する。この排菌は3か月程度継続する。また、この排菌は、全ての感染牛で起こるのではなく、一部の感染牛で起こっている。
- 感染後30か月(95%信用区間:6~84か月)から、持続的な排菌が起こる。
- 持続的な排菌の開始から7か月(95%信用区間:5~9か月)後に、血液中に抗体が出現する。
成果の活用面・留意点
- 実験的な環境ではなく、サーベイランスの結果から若齢時の一過性の排菌があることを示したのは本研究が世界初である。
- 本研究の結果を用いて、ヨーネ病の感染拡大や検査による摘発についてシミュレーションを行うことで、様々な清浄化対策の有効性の評価や、サーベイランスの有効性の比較が可能となる。
- 利用したデータは様々な年に摘発された感染牛を含んでおり、この間のヨーネ病の感染状況の変化やサーベイランスの実施方法の変化を考慮していないことに注意する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
- 研究期間:2013~2017年度
- 研究担当者:山本健久、筒井俊之、早山陽子、清水友美子
- 発表論文等:Yamamoto T. et al. (2018) Prev. Vet. Med. 149:38-46