「ミルキークイーン」の出穂期を遅くした同質遺伝子系統新品種「ミルキーオータム」

要約

「ミルキーオータム」は、「コシヒカリ」の低アミロース突然変異品種「ミルキークイーン」の遺伝的背景に、インド型品種由来の出穂性遺伝子Hd5を有する同質遺伝子系統である。育成地における熟期は、「日本晴」と同じ"やや晩"である。

  • キーワード:水稲、作期分散、低アミロース、同質遺伝子系統
  • 担当:次世代作物開発研究センター・稲研究領域・稲育種ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8536
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

低アミロース米水稲品種「ミルキークイーン」は、米飯の粘りが強く冷めても硬くならず良食味であることが市場で高く評価されているが、主力品種「コシヒカリ」と同熟期である。農業従事者の減少と法人化による経営規模拡大が進んでおり、労力や農業機械の競合を分散させるため、作期分散が可能な品種の育成が強く望まれている。そのため、「ミルキークイーン」型の低アミロース米を、「コシヒカリ」より遅い「日本晴」熟期で生産可能な品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ミルキーオータム」は、インド型品種「Kasalath」由来の出穂性遺伝子Hd5を有するコシヒカリ同質遺伝子系統品種「関東HD2号」と、「コシヒカリ」の低アミロース突然変異品種「ミルキークイーン」の交雑後代から育成された同質遺伝子系統である。
  • 出穂性遺伝子Hd5近傍の約625kbp領域以外の染色体領域は「ミルキークイーン」に置換されている(図1)。
  • 育成地における出穂期及び成熟期は、「ミルキークイーン」よりそれぞれ8日、15日遅く、「日本晴」並の"やや晩"である(表1)。
  • 白米中のアミロース含有率及びタンパク質含有率は「ミルキークイーン」並である。炊飯米の食味は「ミルキークイーン」並の"上中"である。
  • 稈長は「ミルキークイーン」並からやや長い"長"、穂長及び穂数は「ミルキークイーン」並の"中"で、草型は"中間型"である。
  • 精玄米収量及び玄米千粒重は「ミルキークイーン」並である。
  • 玄米の外観品質は"中中"、高温登熟性は"やや弱"で「ミルキークイーン」並である。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は"+"と推定され、葉いもち及び穂いもち抵抗性はともに"弱"である。耐倒伏性は "弱"、穂発芽性は"難"、白葉枯病抵抗性は"中"、障害型耐冷性は"強"で、いずれも「ミルキークイーン」並である。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地は関東・北陸以西である。静岡県で100ha(2021年度)の普及が見込まれる。
  • いもち病抵抗性が弱いので、適正な防除を行う。また、耐倒伏性が不十分なので、多肥は避ける。

具体的データ

図1 「ミルキーオータム」の遺伝子型?表1 「ミルキーオータム」の特性概要(2008~16年、育成地、早植標肥栽培)

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)
  • 研究期間:2006~2016年度
  • 研究担当者:黒木慎、後藤明俊、佐藤宏之、松原一樹、石井卓朗、山口誠之、小林伸哉、平林秀介、竹内善信、久野陽子、加藤浩、春原嘉弘、井辺時雄、根本博、安東郁男、前田英郎、田中淳一、津田直人、常松浩史、池ヶ谷智仁、太田久稔
  • 発表論文等:黒木ら 品種登録出願公表2017年8月18日(第32101号)