ゴマ「まるひめ」とナタネ「ななはるか」の作付体系と圧搾油の特性

要約

九州地域において「まるひめ」と「ななはるか」を圧搾油の原料とするための一年二作の作付ができる。「まるひめ」は6月播種が適し、「ななはるか」の機械収穫は成熟後7から10日目が適する。両品種を原料とした圧搾油は総ORAC値がやや高い。

  • キーワード:一年二作、6次産業化、オレイン酸、セサミン、クロロフィル、ORAC
  • 担当:次世代作物開発研究センター・畑作物研究領域・カンショ・資源作物育種ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-8393
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ゴマ(Sesamum indicum L.)品種「まるひめ」は早生でリグナン含量が高く、ナタネ(Brassica napus L.)品種「ななはるか」は早生でエルシン酸を含まないため、高品質な国産圧搾油の原料として期待されている。九州はゴマやナタネの生産が盛んであるとともに、地場の搾油メーカーも多い。そこで両品種を九州の6次産業化に活用するため、ゴマとナタネの原料生産性を高める一年二作の作付体系を確立するとともに、両品種の成分特性や圧搾油の特性を明らかにし、栽培・加工マニュアルを作成する。

成果の内容・特徴

  • 「まるひめ」栽培後に「ななはるか」を作付けしても、「ななはるか」栽培後に「まるひめ」を作付けしても、それぞれの後作には病害発生や低収などの影響は無く、一年二作が可能で、搾油原料の生産性は高い。
  • 「まるひめ」は遅くとも9月中旬には収穫でき、後作「ななはるか」の播種適期10月中旬まで時間的余裕があるため、「まるひめ」の後に「ななはるか」を栽培する一年二作の体系が推奨できる(図1)
  • 「まるひめ」のセサミン含量は、6月播種の方が7月播種より多く、成熟に伴い減少する。「まるひめ」の脂肪酸は、6月播種ではオレイン酸とリノール酸の割合はほぼ等しいが、7月播種ではオレイン酸が低く、リノール酸が高い(図2)。
  • 「ななはるか」の機械収穫の適期は成熟期から7~10日後で、茎には緑が残り、莢が黄色くなった状態である。「ななはるか」は成熟期以降、種子中の含油率や脂肪酸組成が変化しないが、成熟期直後は、種子中のクロロフィル含量が高く圧搾油は緑色を帯び品質が低下する(図3)。
  • 「まるひめ」と「ななはるか」の圧搾油の総ORAC値は市販の油よりやや高く(図4)、抗酸化能が高い。
  • 九州地域の生産者や全国の実需者及び消費者を対象とし、栽培法、成分特性、最適な利用方法までを解説したマニュアルを作成した。

成果の活用面・留意点

  • 九州地域の生産者・団体、圧搾油を商品とする搾油メーカーや加工食品メーカー、また行政機関が活用する。生産性が高い高品質な原料生産が可能になると共に、圧搾油の特性を活かした商品化や食べ方の参考となることから、栽培から加工利用までを通じた6次産業化に貢献する。
  • 一年二作の作付け体系は鹿児島県等において10ha以上の作付が見込まれるとともに、圧搾油および圧搾油を用いた加工食品の商品化が検討されている。

具体的データ

図1 九州地域における「まるひめ」と「ななはるか」の一年二作の栽培暦?図2 播種期が異なる「まるひめ」種子の脂肪酸組成の違い?図3 成熟期以降の「ななはるか」種子のクロロフィル含量の推移?図4 「まるひめ」および「ななはるか」の圧搾油における総ORAC値

その他

  • 予算区分:競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2014~2016年度
  • 研究担当者:大潟直樹、加藤晶子、川崎光代、手塚隆久、沖智之、鈴木達郎、原貴洋、伊藤知子(帝塚山大生活)、原薗秀雄(金峰ごま生産組合)、西垂水武志(クリーンベースちらん)、村山博隆(村山製油)
  • 発表論文等:
    1)大潟、加藤(2017)日作紀、86(3)276-281
    2)農研機構(2017)「「まるひめ」と「ななはるか」からプレミアムオイル