カラムナータイプのリンゴを正確に選抜できるDNAマーカーの開発
要約
リンゴのカラムナー性の原因と考えられる挿入変異周辺のゲノム配列から設計した3種類のプライマーを用いたPCRにより、カラムナータイプのリンゴを正確かつ簡便に選抜できる。
- キーワード:リンゴ、樹形、カラムナー、DNAマーカー、突然変異
- 担当:果樹茶業研究部門・リンゴ研究領域・リンゴ育種ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-6453
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
リンゴ品種「McIntosh」の突然変異体として発見された「Wijcik」は、普通の栽培品種に比べて節間が短く、側枝の発生が少ないため、細長い円柱状の樹形に生長する。これらの性質はカラムナー性と呼ばれ、樹形が単純でコンパクトになるため、収穫やせん定などの作業を省力化できると期待されている。本研究では、省力的なリンゴ生産への応用に向けて、カラムナー性を引き起こした突然変異を同定し、そのゲノム構造の違いに基づいてカラムナータイプのリンゴを早期選抜できる判別精度の高いDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
- カラムナー性の原因遺伝子(カラムナー遺伝子)は、第10連鎖群の101kbの領域(リンゴ公開ゲノム配列の18775-18876kb)に座乗する。
- カラムナー遺伝子の座乗領域には、突然変異の原因と考えられる8.2 kbのLTRレトロポゾンが挿入されている。
- 挿入変異の約16kb下流に位置し、「Wijcik」で特異的に発現するジオキシゲナーゼ遺伝子がカラムナー遺伝子の有力な候補である。
- このジオキシゲナーゼ遺伝子を過剰発現させた形質転換タバコ(図1)及びリンゴ(図省略)は、草丈と節間が短くなる。
- 8.2 kbの挿入配列周辺に設計した3種類のプライマーNormal-F、Normal-RとColumnar-R(図2)を用いたPCRにより、カラムナータイプのリンゴに特異的な128 bpの断片を増幅できる(図3)。128 bpの断片の有無に基づいて、幼苗段階でカラムナータイプのリンゴを正確に早期選抜できる。また、3種類のプライマーを用いたPCRにより増幅される約250 bpの断片は、PCRが成功したかどうかを確かめるポジティブコントロールとして利用できる。
普及のための参考情報
- 普及対象:リンゴ育種を行う国公立試験研究機関、大学法人
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:3種類のプライマーを用いたPCRにより増幅される128 bpの断片は、アガロースゲル電気泳動で簡便に検出できる。シーケンサーを保有していない研究室でも利用可能なDNAマーカーであるため、国内外の幅広い育種現場へ普及が期待される。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)、競争的資金(科研費)
- 研究期間:2012?2016年度
- 研究担当者:岡田和馬、和田雅人、森谷茂樹、片寄裕一、藤澤弘子、呉健忠、金森裕之、栗田加奈子、佐々木晴美、藤井浩、寺上伸吾、岩波宏、山本俊哉、阿部和幸
- 発表論文等:Okada K. et al. (2016) J. Plant Res. 129(6):1109-1126