渋皮が簡単に剥ける早生のニホングリ新品種「ぽろすけ」

要約

「ぽろすけ」は「ぽろたん」より1週間程度早く収穫される早生の易渋皮剥皮性品種である。「ぽろすけ」と「ぽろたん」は相互に受粉樹として利用できるため、両品種のみを植栽すれば、渋皮の剥けやすい果実を安定生産することが可能である。

  • キーワード: ニホングリ新品種、易渋皮剥皮性、早生、受粉樹
  • 担当: 果樹茶業研究部門・品種育成研究領域・ナシ・クリ育種ユニット
  • 代表連絡先: 電話 029-838-6453
  • 分類: 普及成果情報

背景・ねらい

2007年に品種登録されたニホングリ「ぽろたん」は、渋皮が簡単に剥けるという画期的な特性から全国で普及が進んでいる。しかしながら、これまで易渋皮剥皮性品種は本品種のみであったことから、渋皮の剥けやすい果実を収穫できる期間は「ぽろたん」の収穫期間である2週間程度に限られ、渋皮の剥けやすいクリの生産拡大を図る上での障害となっていた。また、クリは自家不和合性であるため結実を確保するためには受粉樹が必要であるが、「ぽろたん」の受粉樹として利用可能な品種はすべて渋皮剥皮が困難であったことから、受粉樹によっては渋皮の剥けにくい果実の混入が避けられないという問題があった。そこで、「ぽろたん」とは収穫期が異なり、かつ「ぽろたん」の受粉樹として利用可能な易渋皮剥皮性品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 2004年に果樹茶業研究部門において、極早生の育成系統550-40に早生の「丹沢」を交雑して得られた実生から選抜した。2009年から2015年までクリ第7回系統適応性検定試験に供試して検討した結果、2016年2月の同試験成績検討会において新品種候補とした。2016年6月9日に品種登録出願し、9月29日に出願公表された。
  • 渋皮剥皮性は「ぽろたん」と同程度で、鬼皮の上から果肉に達する程度の傷を入れて加熱することで渋皮を容易に剥くことが可能である(図1)。
  • 収穫期は「ぽろたん」よりも1週間程度早い8月下旬~9月上旬で「丹沢」と同時期である(表1)。樹勢、収量及び双子果、腐敗果、虫害果の発生率は「丹沢」と同程度である。裂果の発生は「丹沢」より若干少ない。
  • 果実は「丹沢」や「ぽろたん」よりやや小さく、1果重は21g程度である(表2)。「ぽろたん」、「丹沢」に比べて、果肉の色は黄色味が薄く、甘味、香気も若干少ない。肉質はやや粉質で、「丹沢」と同程度である。
  • 「ぽろすけ」と「ぽろたん」は相互に交雑和合で(表3)、これらのみを植栽した園地では渋皮の剥けやすい果実のみを安定して収穫することが可能となる。 >

普及のための参考情報

  • 普及対象: クリ生産者、クリ加工事業者等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等: 全国のクリ栽培地帯で栽培可能であり、「ぽろたん」より早生の渋皮剥皮性が容易な品種として普及が期待される。(許諾苗木生産業者数48社)。
  • その他: 苗木販売は2017年秋季より開始予定。全国における試作試験では、小果であることが主な問題点として指摘されている。年次によってモモノゴマダラノメイガ等による虫害が多発する場合があるので、被害毬果を園外へ持ち出す等の耕種的防除とともに、適期防除を行うことが望ましい。

具体的データ

図1 「ぽろすけ」の渋皮剥皮性。果実中心部に長さ約2cm、深さ3mm程度の傷を入れ、オーブントースター(1,200W)で7分加熱
; 表1 「ぽろすけ」の樹体特性; 表2 「ぽろすけ」の果実特性; 表3 「ぽろたん」と「ぽろすけ」の交雑和合性

その他

  • 予算区分: 交付金
  • 研究期間: 2004~2016年度
  • 研究担当者: 齋藤寿広、髙田教臣、澤村豊、西尾聡悟、平林利郎、佐藤明彦、加藤秀憲、尾上典之、内田誠
  • 発表論文等: 齋藤ら「ぽろすけ」 品種登録出願第31235号 (2016年9月29日出願公表)