農研機構育成カンキツ品種の親子関係の検証
要約
農研機構で育成したカンキツ33品種についてDNAマーカーを用いて親子関係を検証すると、「せとか」、「サザンレッド」、「麗紅」の親子関係の矛盾が明らかになり、「せとか」の正しい種子親はKyEn No.4と推定される。
- キーワード:DNAマーカー、「せとか」、「サザンレッド」、「麗紅」、親子鑑定
- 担当:果樹茶業研究部門・カンキツ研究領域・カンキツ育種ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-6453
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
品種の親子関係は、遺伝的背景を理解し、効率的な育種計画を立てる上で重要な情報となるが、農研機構で育成されたカンキツ品種についてはDNAマーカーを利用した親子関係の確認を行った例は限られている。そこで、DNAマーカーを利用して主要なカンキツ育成品種の親子関係を確認することを目指す。
成果の内容・特徴
- 新品種「みはや」、「あすみ」を含む農研機構で育成したカンキツ33品種をその親として報告されている26品種・系統とともに(表1)、19種類のCAPSマーカーを用いて遺伝子型解析を実施し、報告されている親子関係を検証すると、そのうち30品種はその親子関係に矛盾はない。一方、「せとか」(「津之望」×「マーコット」)、「サザンレッド」(「カラ」×ポンカン)および「麗紅」(KyEn No.5×「マーコット」)で1つ以上の遺伝子座において遺伝子型に矛盾がある(表2)。
- 矛盾した親子関係について現存する育種母本およびCAPSマーカーを追加して解析すると、「せとか」は種子親である「津之望」、「サザンレッド」は花粉親であるポンカン、「麗紅」は種子親であるKyEn No.5に矛盾がある(表2)。
- 親子関係に矛盾のあった「せとか」、「サザンレッド」、「麗紅」についてCAPSマーカーの遺伝子型データに加え、真の親候補を推定するため116個のSNPマーカーの遺伝子型データを用いて検証すると、「せとか」の真の種子親候補はKyEn No.4であり、「サザンレッド」の真の花粉親候補は「オセオラ」である(表3)。また、「麗紅」の真の親候補は不明である。
成果の活用面・留意点
- 血縁関係の情報を確認、修正したことで果樹の品種育成の際に適切な交配組み合わせの決定および評価が可能となる。
- 親子関係の検証により品種の遺伝的背景の理解に寄与し、適切な遺伝解析が可能となることから効率的なカンキツ品種育成につながることが期待される。
- KyEn No.4およびKyEn No.5の交配組み合わせはともに「清見」×「アンコール」である。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2010~2016年度
- 研究担当者:野中圭介、藤井浩、喜多正幸、島田武彦、遠藤朋子、吉岡照高、大村三男(静大農)
- 発表論文等:Nonaka K. et al. (2016) Hort. J. doi: 10.2503/hortj.OKD-026