KODA及びその類縁体C-KODAはウンシュウミカンの春枝発生を促進する

要約

植物由来の生理活性物質9,10-α?-ケトールリノレン酸(KODA)及びその類縁体C-KODAは、ウンシュウミカンに対し夏に処理することによって、翌年の春に発生する花の数には影響を与えず、春枝(新梢)発生数を増加させる。

  • キーワード:KODA、ウンシュウミカン、オキシリピン、春枝発生数
  • 担当:果樹茶業研究部門・生産・流通研究領域・流通利用・機能性ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

9,10-α?-ケトールリノレン酸(以後KODAとする)は、アオウキクサより単離されたオキシリピンに属する化合物で、1年生ウンシュウミカンに対し、翌年の腋芽の発芽を促進することで、翌々年の花蕾発生数を増大させる。そこで本研究では、KODA及びその類縁体C-KODAを利用し、ウンシュウミカンの隔年結果を改善する技術開発を目指す。成木に対しKODA及びC-KODAを処理することで、翌年の花蕾および新梢(春枝)発生数に与える影響について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ウンシュウミカン「日南1号」成木において、100μMのKODAを夏(7月29日)に散布した主枝及び秋(10月10日)に散布した主枝では、翌年の春の花蕾発生数が、どちらの処理区でも、対照区と比べ変化はみられない(図1A、C)。
  • 一方、翌年の春に発生する春枝(新梢)数は、秋にKODAを散布した処理区で対照区と変化が見られないが(図1D)、夏にKODA散布した処理区では、対照区に比べ有意に増大する(図1B)。
  • また、ウンシュウミカン成木「日南1号」において、夏(8月4日)に100μMの KODAまたはC-KODA(KODAの類縁体)を散布した主枝では、対照区に比べ、翌年の春の花蕾発生数には変化がないが、春枝発生数はKODA及びC-KODA処理で多い傾向があり、C-KODA処理では有意な増大がみられる(図2)。
  • 以上のことから、KODA及びC-KODAは、前年の夏に処理することで、春に発生する花の数には影響せずに、春枝の数を増大させる効果がある。また、C-KODAは、化学的に不安定な化合物であるKODAを改善するために開発された類縁体であるため、KODAに比べ効果が高いと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • ウンシュウミカンの隔年結果は、結実数の多い表年に春枝の発生が少なく、翌年に花をつける枝が減少するため、結実数が少ない裏年となることが原因の一つである。KODAやC-KODAを裏年の夏に散布することで、翌年の表年に、花蕾発生数には影響せず、春枝発生を増大させるため、春枝数の減少を防止できる効果が期待できる。したがって、KODA及びC-KODAの利用が隔年結果の軽減に役立つ可能性がある。
  • KODAは不安定な化合物であるため、安定的な効果が得られない欠点がある。その点を改善するために開発された類縁体C-KODAは、より効果が高く、実用性が高いと考えられる。実用化のためには、C-KODAのような類縁体の開発や作用性の検討を更に進めることが必要である。
  • 本研究に使用したデータは、生研センター「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」において実施された試験の結果である。

具体的データ

図1 ウンシュウミカン成木に対する夏(A,B)及び秋(C,D)のKODA処理が翌年の春に発生する花の数(A,C)及び春枝の数(B,D)に及ぼす影響?図2 ウンシュウミカン成木に対する夏のKODA及びC-KODA処理が、翌年の春に発生する花の数(A)及び春枝の数(B)に及ぼす影響

その他

  • 予算区分:その他外部資金(生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:中嶋直子、生駒吉識、松本光、佐藤景子、中村ゆり、横山峰幸(資生堂)、伊福欧二(資生堂)、吉田茂男(理研)
  • 発表論文等:Nakajima N. et al. (2016) HortScience 51(2):141-144