九倍体「平核無」由来のわい性で八倍体の枝変わりカキ新品種「八秋」
要約
カキ新品種「八秋」は、九倍体「平核無」のわい性枝変わりであり、世界で初めて発見された八倍体である。「平核無」に比べて一年生枝長と節間長は短く、花、葉および果実は小さい。「八秋」は種子形成力があり、種子の発芽能力は高い。
- キーワード:カキ新品種、枝変わり、八倍体、わい性、種子形成力
- 担当:果樹茶業研究部門・ブドウ・カキ研究領域・ブドウ・カキ栽培生理ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-6453
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
「富有」を含めて多くのカキ品種は六倍体(2n=90=6x)であるが、「平核無」ならびにその枝変わり品種は九倍体(2n=135=9x)である。これらの九倍体品種の種子形成力は極めて低いため種なしになる。2005年に農研機構果樹茶業研究部門ブドウ・カキ研究領域に植栽中の「平核無」からわい性の枝変わりを発見した。この枝変わり「八秋」は「平核無」とは異なり正常な種子を形成する。そこで、「八秋」を高接ぎによって増殖して、その生育特性、果実品質および倍数性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 「平核無」と比較して「八秋」の一年生枝長、節間長および葉柄長は短く、花らい重、葉面積も小さい(表1)。
- 「八秋」の育成地における開花期および収穫期は「平核無」と同じ5月下旬、10月下旬である。果皮色は「平核無」より赤みがやや優れる(表2)。甘渋性は不完全渋柿である(図1)。「八秋」の果実形は不正円形であり、へた幅は「平核無」より小さく、果実重は「平核無」の約1/4程度である(表2)。「八秋」は「平核無」と同様にCTSD(constant-temperature short-duration)脱渋法によって容易に脱渋でき、糖度は「平核無」より高く、果肉硬度は低い(表1)。
- フローサイトメトリおよび体細胞の染色体数の解析結果から、「八秋」は八倍体(2n =120=8x)であり(図2)、倍数性が減少した突然変異体である。
- 「平核無」の種子数が0個であるのに対して、「八秋」は4個程度の正常な種子を形成する(表2、図1)。種子の大きさは極小であり、不完全種子(胚の発達が不良な種子)も形成されるが、完全種子(0.1g以上)の発芽率は86.7%と高い。
成果の活用面・留意点
- 八倍体であること、わい性の生長を示す特性は、基礎研究の素材として利活用できる。
- 発芽能力のある種子を獲得できることから、新たな倍数性系統の育成ならびにその生態特性の解明のための交配母本に利活用できる。
- 「八秋」は「平核無」が栽培可能な地域が適地と考えられる。育成地において、特に弱い病気および目立った害虫の被害は観察されていない。「平核無」と比較して、果頂裂果および汚損果の発生がやや多い。
- 2015年3月3日付けで種苗法に基づき第23900号として品種登録されている。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2005~2016年度
- 研究担当者:薬師寺博、山崎安津、小林省藏、金好純子(広島県農総技セ)、東暁史、杉浦裕義、佐藤明彦
- 発表論文等:
1)Yakushiji. H. et al. (2016) Hort. J. 84(3):214-226
2)薬師寺ら「八秋」品種登録番号第23900号(2015年3月3日)